薬剤師はコミュニケーションが苦手だと難しい?調剤薬局で必要な会話力とは

薬局実務

薬剤師の仕事というと、薬の知識や調剤技術がまず思い浮かぶかもしれません。

もちろん、薬の知識は必要です。
用法用量、相互作用、副作用、保険上の扱いなど、確認すべきことは多くあります。

ただ、実際に調剤薬局で働いていると、それだけでは仕事が回らない場面も多いです。

患者さんから話を聞く。
薬の説明をする。
医師や病院へ疑義照会をする。
職場内で情報共有をする。
薬歴やメモに、次の人が分かるように記録を残す。

こういった場面では、何らかのコミュニケーションが必要になります。

では、薬剤師は話すのが得意でなければ難しい仕事なのでしょうか。

結論から言うと、薬剤師は明るく雑談できる人でなければいけない、というわけではありません。

ただし、必要な情報を聞けない、分かりやすく説明できない、分からないことを相談できない、職場内で情報共有できない状態だと、調剤薬局の仕事はかなり難しくなります。

この記事では、薬剤師に必要なコミュニケーションについて、調剤薬局の現場目線で書いていきます。

薬剤師に必要なのは雑談力だけではない

「コミュニケーション能力」と聞くと、誰とでも楽しく話せる力や、明るく雑談できる力を想像する人もいるかもしれません。

もちろん、患者さんと自然に会話できることは強みになります。
相談しやすい雰囲気を作れる薬剤師は、患者さんから情報を聞き取りやすいこともあります。

ただ、薬剤師に必要なコミュニケーションは、それだけではありません。

調剤薬局で必要なのは、主に次のような力です。

  • 患者さんが言いにくいことを聞く力
  • 専門的な内容を、相手に分かる言葉で説明する力
  • 分からないことを、具体的に相談する力
  • 医師や病院へ、確認したい内容を整理して伝える力
  • 薬歴やメモで、職場内に情報を共有する力

つまり、薬剤師に必要なのは、たくさん話す力というより、必要なことを過不足なくやり取りする力です。

話すのが苦手でも、質問の型や説明の型を作ることで対応しやすくなる部分はあります。

その意味では、薬剤師にとってコミュニケーションは、性格の明るさではなく、薬を安全に使ってもらうための実務スキルだと思います。

患者さんは飲み忘れや残薬を言いにくいことがある

調剤薬局で患者さんと話していると、薬が残っていることや、飲めていないことを言いにくそうにする人がいます。

  • 飲み忘れた
  • 外出中で昼の薬が飲めなかった
  • 体調が悪くて飲めなかった
  • 薬が余っている

こういったことに対して、患者さん自身が申し訳ないと思っていることがあります。

医師や薬剤師に言うと怒られるのではないか、と思っている人も意外といます。

もちろん、飲み忘れを軽く見てよいという話ではありません。

重要な薬なのにほとんど飲めていない場合や、医師から説明を受けているにもかかわらず服用できていない場合には、きちんと指導が必要な場面もあります。

ただ、大抵の人は、飲み忘れることくらいはあります。

仕事、学校、外出、食事のタイミング、体調不良などで、毎回きっちり飲むことが難しい人もいます。

そこで、最初から責めるように聞いてしまうと、患者さんは本当のことを言いにくくなります。

たとえば、

「ちゃんと飲んでいますか」

という聞き方だと、人によっては責められているように感じるかもしれません。

一方で、

「飲み忘れることはありますか」
「昼の薬は、仕事や外出中で飲みにくいことはありませんか」
「余っている薬があれば、調整できる場合があります」

という聞き方にすると、患者さんも答えやすくなることがあります。

特に、飲めないタイミングが毎回決まっている場合は大切です。

たとえば、昼の薬が仕事中や学校、外出中でどうしても飲めない場合、単に「忘れないようにしてください」と伝えるだけでは解決しないことがあります。

その場合は、医師に相談して、用法を変更できないか、別の薬にできないか、服用タイミングを見直せないかを考える必要が出てくることもあります。

患者さんが言いにくい情報を話せるようにすることも、薬剤師のコミュニケーションの一つです。

これは、市販薬やサプリメントの確認でも同じです。

患者さんは、市販薬やサプリを「薬」と思っていないこともあります。
貼り薬や塗り薬、健康食品などは、こちらから聞かないと出てこないこともあります。

だからこそ、患者さんが答えやすい聞き方をすることが大切です。

市販薬やサプリメントを確認する理由については、こちらの記事で詳しく書いています。

関連記事:薬剤師が市販薬やサプリを確認する理由|飲み合わせだけではない注意点

分かりやすく伝えることもコミュニケーションの一つ

薬剤師の説明では、専門用語をそのまま使わず、患者さんに伝わる言葉へ置き換えることも必要です。

ただ、専門用語を避ければ、それだけで分かりやすい説明になるわけではありません。

何を一番伝えたいのかを整理し、薬の使い方や注意点を、患者さんが実際に行動できる形で説明することが大切だと思います。

副作用についても、必要な注意点を伝えないのではなく、必要以上に不安にさせず、どのような症状が出たら相談・受診すればよいのかまで伝えることを意識しています。

私自身も、患者さんに分かりやすく伝えようとして言い換えた結果、逆に伝わりにくくなってしまった経験があります。

反対に、表現を変えたことで、患者さんが副作用について必要以上に怖がらず、注意点を理解してくれたこともあります。

大切なのは、専門用語を使わないこと自体を目的にするのではなく、患者さんが理解し、必要なときに行動できるように伝えることだと思います。

薬の説明をするときの言葉の選び方については、別の記事で詳しく整理しています。

関連記事:患者に薬を説明するのが苦手な薬剤師へ|専門用語を使わない服薬指導の考え方

「何を聞けばいいか分からない」ときは、分からない部分を分けて考える

コミュニケーションが苦手という悩みの中には、「何を聞けばいいか分からない」というものもあります。

これにも段階があります。

単に話すのが苦手というより、何かをしようとしているけれど、何をすればよいのか分からない状態です。

たとえば、新人や転職直後に、店舗の一日の流れが分からないまま配属されたとします。

その場合、患者対応をすればよいのか、調剤を進めればよいのか、店舗の雑務を片付ければよいのか、判断に迷うことがあります。

何か任されたことが特にないのであれば、

「今、何をすればいいですか」

と聞いてもよいと思います。

患者さんが来たら対応してほしいと言われているなら、

「患者さんが来たときの対応の流れはどのようにしますか」

と聞く方が具体的です。

処方箋を受け取った後の流れが分からないなら、

「この店舗では、処方箋を受け取った後はどの順番で動きますか」

と聞くこともできます。

分からないことを聞くのは大切です。

ただし、「全部分かりません」だけでは、教える側もどこから説明すればよいか迷います。

  • 今、自分が何をしようとしているのか
  • どの作業の流れが分からないのか
  • 患者対応なのか、調剤なのか、店舗内の雑務なのか

このように、分からない部分を少し分けてから聞くと、相手も答えやすくなります。

これは新人のうちは難しいと思います。

最初からうまく聞けなくても仕方ありません。

それでも、少しずつ「自分は今どこで止まっているのか」を考えるようにすると、相談しやすくなります。

分からないことを具体的に聞く力も、薬剤師に必要なコミュニケーションです。

疑義照会や問い合わせは、事前に整理しておくと話しやすい

医師や病院への疑義照会は、慣れていないと緊張する場面の一つだと思います。

私自身も、何を確認したいのかが整理できていない状態で電話すると、必要なことをうまく伝えられないと感じることがありました。

そのため、電話をする前に、

  • 処方のどこが気になったのか
  • どこまで確認したのか
  • 患者さんから何を聞いたのか
  • 医師に何を確認したいのか

を整理してから連絡するようにしています。

話すことが得意でなくても、伝える内容を事前に整理しておくだけで対応しやすくなる部分があります。

メーカーへ問い合わせる場合も同じです。

確認したい条件や質問内容を整理しておけば、こちらが知りたいことも伝えやすくなります。

疑義照会そのものの考え方や、苦手意識があるときにどう整理するかについては、別の記事で詳しく書いています。

関連記事:疑義照会が怖い薬剤師へ|処方意図を確認する考え方と準備

薬歴やメモもコミュニケーションの一部

薬剤師のコミュニケーションは、直接話すことだけではありません。

患者さんから聞いたことや、病院・メーカーへ問い合わせた内容、次回確認したいことなどは、自分以外の薬剤師にも伝わる形で残しておく必要があります。

複数人で働いている薬局では、自分が休みの日に別の薬剤師が対応することもあります。

そのため私は、必要な情報については、自分がその内容を忘れてしまっても、記録を見た人が対応できるかという視点で残すことを意識しています。

もちろん、何でも細かく書けばよいわけではありません。

薬歴に残すのか、職場内のメモやノートで共有するのか、口頭で伝えるのかは内容によって変わります。

話すことが苦手でも、必要な情報を整理して記録に残すことが得意な人もいます。

相手が次に困らないように情報を残すことも、薬剤師に必要なコミュニケーションの一つだと思います。

薬歴の役割や、実際にどのような内容を記録しているのかについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

関連記事:薬歴は何のために書くのか|薬剤師が記録していること

苦手でも型で補える部分はある

話すことが苦手でも、薬剤師のコミュニケーションには、ある程度「型」を作れる部分があります。

患者さんへの確認であれば、

  • 前回から体調に変化はないか
  • 飲みにくかった薬はないか
  • 飲み忘れや残薬はないか
  • 他の薬やサプリメントを使っていないか
  • 薬を使って気になる症状はなかったか

など、よく確認する項目をある程度決めておくことができます。

職場内で相談するときも、

  • 今、何をしようとしているのか
  • どこまで確認したのか
  • 何に迷っているのか
  • 何を判断してほしいのか

を整理してから聞くと、相手にも伝わりやすくなります。

疑義照会も同じで、確認したい内容を先にメモしておけば、電話で話す順番に迷いにくくなります。

コミュニケーションが得意か苦手かを性格だけの問題として考えるのではなく、仕事の中で使う聞き方や伝え方をある程度決めておくことで補える部分はあります。

最初から自然にできる必要はありません。

私自身も、患者さんへの説明がうまく伝わらなかった経験や、言い方を変えたことで納得してもらえた経験があります。

そうした経験を重ねながら、自分なりの聞き方や伝え方を作っていけばよいと思います。

まとめ

薬剤師は、話すことや雑談が得意でなければできない仕事ではありません。

一方で、調剤薬局では、

  • 患者さんから必要な情報を聞く
  • 薬について分かりやすく伝える
  • 分からないことを相談する
  • 疑義照会や問い合わせの内容を整理して伝える
  • 必要な情報を薬歴やメモで共有する

といったコミュニケーションは必要になります。

ただし、これらは性格の明るさや話術だけで決まるものではありません。

聞き方、説明の仕方、相談の仕方、記録の残し方をある程度型にすることで、苦手でも補える部分があります。

薬剤師に必要なコミュニケーションは、会話を盛り上げるためのものではなく、患者さんに安全に薬を使ってもらい、職場で必要な情報を共有するための実務スキルだと考えています。