薬局で患者さんから「先発品のままがいい」と希望されたとき、通常の薬代とは別に「特別の料金」が発生する場合があります。
これは、2024年10月から始まった長期収載品の選定療養という制度によるものです。
2026年6月からは特別の料金の基準が引き上げられ、2027年3月には計算方法の変更も予定されています。
ただし、先発品を調剤すれば必ず追加料金がかかるわけではありません。医療上の必要性がある場合や、後発医薬品を提供することが困難な場合などは、従来どおり保険給付となります。
この記事では、長期収載品の選定療養について、薬剤師が処方箋のどこを確認し、どのような場合に特別の料金が発生するのかを整理します。
患者さんへの説明の仕方や、実際に説明してきた経験についても紹介します。
※制度の内容は2026年10月時点のものです。2027年3月からの変更は、現行制度と分けて説明しています。
長期収載品の選定療養とは?どんな先発品が対象になる?
長期収載品の選定療養は、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある一部の先発医薬品について、患者さんの希望で先発品を選択する場合に、通常の保険診療の自己負担とは別に「特別の料金」を支払う制度です。
2024年10月に始まり、当初は先発品と後発品の価格差の4分の1相当が特別の料金とされていました。
2026年6月1日からは、この割合が価格差の2分の1相当に引き上げられています。
例えば、先発品が1錠100円、後発品が1錠60円であれば、価格差40円の2分の1である20円が、1錠当たりの特別の料金を計算する基準になります。
ただし、実際の料金は診療報酬の点数への換算や端数処理などが関係するため、単純に20円へ錠数を掛けた金額と一致するとは限りません。
また、特別の料金には消費税がかかります。 これは通常の1~3割の自己負担とは別に支払うものであり、先発品の薬剤費すべてが自費になるという意味ではありません。
特別の料金に該当しない部分は保険給付の対象となり、患者さんはその部分の自己負担額も支払います。
なお、後発品が複数ある場合は、その中で最も薬価が高い後発品を基準に価格差を計算します。
すべての先発品が対象になるわけではない
長期収載品の選定療養は、後発品があるすべての先発品を対象にしているわけではありません。
原則として、後発品が初めて薬価収載されてから5年が経過した品目や、5年未満でも後発品への置換え率が50%以上となった品目などが対象になります。
ただし、置換え率などによる除外条件もあり、先発品と後発品の薬価の関係も対象となる条件に含まれます。
薬局実務では、こうした基準を個別に計算するよりも、厚生労働省が公開している対象医薬品リストを確認することが基本です。
対象品目は薬価改定などに伴って見直されるため、調剤時点で適用されるリストを確認する必要があります。
先発品を希望すると必ず追加料金がかかる?
先発品を希望する患者さんであっても、すべての場合に特別の料金が発生するわけではありません。
制度上は、患者さんの希望で先発品を選ぶ場合と、医療上の理由などで先発品を使用する場合を区別する必要があります。
| 処方・調剤の状況 | 特別の料金 |
|---|---|
| 対象となる先発品が商品名で処方され、医療上の必要性がなく患者さんが先発品を希望 | 原則発生する |
| 医師が医療上の必要性を認めて先発品を指定 | 発生しない |
| 薬剤師が認められた範囲で医療上の必要性を判断 | 発生しない場合がある |
| 後発品を提供することが困難で先発品を調剤 | 発生しない |
| 後発品があるが、選定療養の対象薬ではない | 発生しない |
| 成分名で処方され(一般名処方)、医療上の必要性がなく患者さんが対象の先発品を希望 | 原則発生する |
重要なのは、「先発品だから追加料金」と一律に判断しないことです。
薬局では、対象医薬品かどうかを確認したうえで、処方箋の記載、医療上の必要性、後発品の供給状況などを確認する必要があります。
なお、公費負担医療や自治体の医療費助成を受けている患者さんも、原則として選定療養の対象になります。通常の医療費が助成されていても、特別の料金まで助成されるとは限りません。
一方、生活保護の医療扶助では取扱いが異なります。医療上の必要性がなく、後発品を提供できる場合は、単に本人の希望で先発品を選択して特別の料金を支払うのではなく、後発品を処方・調剤することになります。
医療上の必要性がある場合はどうなる?
医療上の必要性が認められて先発品を使用する場合は、選定療養の対象とならず、従来どおりの保険給付となります。
厚生労働省の疑義解釈では、医療上の必要性が想定される場合として、主に次のようなものが示されています。
- 先発品と後発品で承認された効能・効果に違いがあり、治療上、先発品が必要と医師が判断する場合
- 後発品を使用した際の副作用や相互作用、治療効果の違いなどから、医師が先発品を必要と判断する場合
- 学会のガイドラインなどを踏まえ、医師が後発品への切替えを避ける必要があると判断する場合
- 後発品の剤形では服用が難しい、一包化ができないなど、剤形上の違いから先発品が必要になる場合
ただし、単に「先発品の方が安心する」「錠剤の見た目が好き」といった理由だけでは、通常、医療上の必要性とは認められません。
薬剤師が判断できる範囲は?
ここは薬局実務で注意したい点です。
効能・効果の違いや、副作用・治療効果の差、ガイドライン上の理由については、基本的に医師・歯科医師の判断が前提となります。
薬剤師がこうした理由から先発品の医療上の必要性を考えた場合は、必要に応じて処方医へ疑義照会することが考えられます。
一方、剤形上の違いによって後発品では適切な服用が困難な場合には、薬剤師が医療上の必要性を判断できることがあります。
例えば、後発品の剤形では患者さんが服用しにくい場合や、吸湿性などの違いによって必要な一包化ができない場合などです。
厚生労働省の疑義解釈では、このような剤形上の問題について、薬剤師が医師への疑義照会なしに判断することも想定されています。
ただし、その場合も、調剤した薬剤の銘柄等について処方箋を発行した医療機関への情報提供が必要です。
つまり、薬剤師が医療上の必要性を一切判断できないわけではありませんが、どのような理由でも自由に判断できるわけでもありません。
医師への確認が必要な理由なのか、薬剤師が判断できる剤形上の問題なのかを分けて考えることが重要です。
後発品の在庫がない・提供できない場合はどうなる?
後発品を提供することが困難なため、先発品を調剤せざるを得ない場合も、特別の料金は発生しません。
ただし、ここで注意したいのは、「薬局に後発品の在庫がない」という事実だけで、すべてを判断しないことです。
厚生労働省の疑義解釈では、後発品を提供することが困難かどうかについて、出荷停止や出荷調整などの対象品目であるかではなく、実際にその薬局で後発品を提供することが困難かどうかで判断するとされています。
例えば、普段採用している後発品が不足していても、別メーカーの後発品を提供できる場合があります。
そのため、薬局では他の後発品も含めた在庫や入手可能性を確認し、実際に提供できるかを考える必要があります。
一方、後発品を提供することができず、先発品を調剤せざるを得ない場合は、患者さんが希望して先発品を選択したことにはなりません。
この場合は、従来どおりの保険給付となります。
なお、どの程度の取寄せや他薬局への確認まで必要かについては、厚生労働省の疑義解釈で一律の具体的基準までは示されていません。
個別の状況を踏まえて判断し、必要に応じて後発品を提供できなかった事情を記録しておくことも大切です。
薬局で在庫が不足した場合の一般的な対応については、以下の記事で整理しています。
関連記事:薬局で薬がないと言われたら?薬剤師が在庫不足のときに確認していること
処方箋のどこを確認する?薬局での対応
長期収載品の選定療養では、処方箋に書かれている薬の名前だけでなく、「変更不可(医療上必要)」欄と「患者希望」欄を確認することが重要です。
これらの欄は処方薬ごとに設けられており、先発品が処方された理由を確認する手がかりになります。
下の図は、厚生労働省の処方箋様式を参考に、選定療養に関係する確認箇所を整理したものです。

図:長期収載品の選定療養で薬局が確認する処方箋のポイント(厚生労働省の処方箋様式を参考に作成)
処方箋では、薬が商品名で指定されている場合と、成分名で記載されている場合があります。
ただし、商品名で書かれているからといって、必ずしも先発品とは限りません。また、先発品の商品名が書かれているだけで、医療上の必要性が認められたことにもなりません。
薬局では、実際に調剤する薬が選定療養の対象かどうかも確認する必要があります。
「変更不可(医療上必要)」欄
医師が医療上の必要性を認めて先発品を指定した場合は、対象となる薬の「変更不可(医療上必要)」欄にチェック等が記載され、所定の署名等が行われます。
この場合は、医療上の必要性による処方として、従来どおり保険給付の対象となります。
なお、医療上の必要性があるかどうか不明な場合は、必要に応じて処方医に確認します。
「患者希望」欄
患者さんの希望によって先発品の商品名が指定された場合は、対象となる薬の「患者希望」欄にチェック等が記載されます。
この場合、選定療養の対象となる先発品を調剤すれば、原則として特別の料金が発生します。
ただし、「患者希望」欄にチェックがある場合でも、薬局で追加料金について説明した結果、患者さんが後発品への変更を希望することがあります。
この場合、患者さんの同意を得て、変更可能な後発品を調剤するのであれば、原則として疑義照会は不要です。
どちらにもチェックがない場合
先発品の商品名で処方されていても、「変更不可(医療上必要)」欄と「患者希望」欄のどちらにもチェックがない場合があります。
この場合、後発品への変更が可能な処方であれば、薬局で後発品を調剤できます。
一方、患者さんが対象となる先発品を希望した場合は、原則として選定療養になります。
また、薬が成分名で処方されている場合(一般名処方)も、患者さんの希望で対象となる先発品を選択すれば、原則として特別の料金が発生します。
なお、両方の欄にチェックがある場合など、処方意図が明確でないときは、疑義照会等によって確認する必要があります。
薬局で追加確認すること
処方箋の記載だけで、特別の料金が発生するかどうかをすべて判断できるわけではありません。
実際には、選定療養の対象医薬品か、後発品を提供できるか、患者さんが最終的にどちらを希望するかも確認します。
また、剤形上の問題などから薬剤師が医療上の必要性を判断する場合や、後発品を提供できない場合は、必要な確認・記録・情報提供を行います。
特別の料金が発生する場合は、実際の負担額を説明したうえで、患者さんの希望を確認することが大切です。
処方箋全般の確認ポイントについては、以下の記事でも整理しています。
関連記事:薬剤師は処方箋のどこを見ている?薬をそろえる前の確認ポイント
患者に追加料金をどう説明する?
長期収載品の選定療養では、制度の内容を細かく説明するよりも、患者さんが気にしていることに合わせて説明する方が伝わりやすいと感じています。
例えば「なぜ先発品だと追加料金がかかるのか」と聞かれた場合は、次のような説明が考えられます。
「国の制度で、ジェネリックがある一部の先発品を希望される場合は、通常の薬代とは別に料金がかかる仕組みになっています。ただし、医療上の理由などで先発品が必要な場合は対象になりません」
また、「先生が先発品で処方したのに、なぜ追加料金がかかるのか」と聞かれた場合は、商品名で処方されたことと、医療上の必要性によって先発品が指定されたことは別であると説明する必要があります。
「後発品がないと言われたのに追加料金がかかるのか」という質問に対しては、実際に後発品を提供できない場合は選定療養にならないことを踏まえ、薬局側で供給状況や処方内容を確認することになります。
実際に患者さんへ説明して感じたこと
私が実際に患者さんへ説明してきた範囲では、特別の料金が数十円から数百円程度で済むことが多く、金額に驚かれることはそれほどありませんでした。
ただし、一部の薬では特別の料金だけで1,000円を超えることもあり、金額を説明すると「それなら後発品にします」と希望を変更される患者さんもいました。
制度そのものについて理解を得にくいと感じた経験はあまりありません。
最初に「国の制度によって、一部の先発品を希望すると通常の自己負担とは別に料金がかかる場合があります」と説明することで、納得していただけることがほとんどでした。
また、医療機関側でも事前に簡単な説明がされていたことは大きかったと思います。薬局で初めて制度を聞くのではなく、ある程度知ったうえで来局されることが、円滑な説明につながっていたと感じています。
この経験から、追加料金が発生することだけでなく、実際にいくらかかるのかを伝えたうえで、患者さんに選択していただくことが大切だと考えています。
2027年3月から特別の料金の計算方法はどう変わる?
長期収載品の選定療養は、2026年6月の負担割合の変更に続き、2027年3月1日から計算方法の変更が予定されています。
ここで注意したいのは、2026年6月と2027年3月では、変更される内容が異なることです。
2026年6月からの現行制度
2026年6月からは、先発品と後発品の価格差の2分の1相当が、特別の料金の基準となっています。
現在は、この価格差に基づいて診療報酬の算定方法に従い点数を算出し、10円を乗じた金額に消費税分を加える方法で計算します。
2027年3月1日からの変更
2026年9月30日付の厚生労働省の事務連絡では、2027年3月1日から特別の料金の計算方法を変更することが示されました。
新しい方法では、先発品と後発品の価格差の2分の1に、投薬全量を乗じた金額をもとに特別の料金を計算することになります。
これまでのように、特別の料金を診療報酬の点数へ換算する方法から変更されます。
つまり、価格差の2分の1という基準自体が再び引き上げられるわけではありません。
計算方法が変わることで、同じ薬でも処方数量によって従来の計算方法との間に差が生じる可能性があります。
なお、2026年10月時点ではまだ施行されていません。実際の料金計算については、2027年3月の施行時に適用される通知や計算上の端数処理、レセプトコンピューターの対応を確認する必要があります。
OTC類似薬の一部保険外療養との違い
2027年3月1日からは、OTC類似薬の一部保険外療養も始まる予定です。
どちらも通常の保険診療の自己負担とは別に料金が発生する制度ですが、対象となる理由が異なります。
長期収載品の選定療養は、後発品を選べる状況で、患者さんが対象の先発品を希望する場合の制度です。
一方、OTC類似薬の一部保険外療養は、市販薬との代替性が特に高い医療用医薬品について、一定の条件で薬剤費の一部を別途負担する制度です。
また、両制度の対象となる医薬品が重なる場合もあります。
2027年3月以降、同じ医薬品が両制度の対象となり、OTC類似薬の一部保険外療養による別途負担が発生する場合は、その医薬品について長期収載品の選定療養による特別の料金を重複して徴収しない取扱いとなります。
一方、OTC類似薬の追加負担の対象外であっても、長期収載品の選定療養については別途判断が必要になる場合があります。
なお、1枚の処方箋にOTC類似薬の別途負担の対象薬と、それとは別の長期収載品の選定療養の対象薬が含まれている場合は、それぞれの薬について別途負担が発生することがあります。
両制度を混同せず、どの薬にどちらの制度が適用されるのか確認することが重要です。
OTC類似薬の一部保険外療養については、以下の記事で詳しく整理しています。
関連記事:OTC類似薬は保険適用外になる?2027年3月予定の追加負担を薬剤師向けに整理
まとめ|長期収載品の選定療養で薬剤師が確認したいこと
長期収載品の選定療養では、患者さんが先発品を希望した場合でも、必ず特別の料金が発生するわけではありません。
薬局では、対象医薬品かどうか、処方箋の変更不可・患者希望の記載、医療上の必要性、後発品の供給状況を確認したうえで判断する必要があります。
また、2026年6月からは特別の料金の基準が価格差の2分の1相当に引き上げられ、2027年3月からは計算方法も変更される予定です。
患者さんへの説明では、単に「先発品は追加料金がかかります」と伝えるのではなく、どのような理由で料金が発生するのか、実際にいくらかかるのか、後発品を選択できるのかを確認しながら説明することが大切だと考えています。
