※この記事には広告・アフィリエイトリンクを含みます。
調剤を始めたころ、私は疑義照会がとても苦手でした。
処方内容に気になる点があっても、医師にダメ出しをするようで気が引けました。
見当違いなことを伝えてしまったらどうしよう。
自分の確認不足だったらどうしよう。
電話口でうまく説明できなかったらどうしよう。
そう考えると、処方箋を見て違和感があっても、すぐに電話をかけるのは簡単ではありませんでした。
ただ、経験を重ねるうちに、疑義照会は医師の間違いを探す仕事ではないと思うようになりました。
疑義照会は、患者さんに安全に薬を使ってもらうために、処方意図や患者さんの状況を確認する仕事です。
この記事では、疑義照会の具体例を細かく並べるのではなく、疑義照会に対する考え方や、怖さを少しずつ減らすために意識していることを書いていきます。
疑義照会は医師の間違い探しではない
疑義照会というと、「処方の間違いを見つけて医師に確認するもの」という印象を持つ人もいるかもしれません。
もちろん、用量、日数、禁忌、併用薬、患者背景などから見て、確認が必要な場面はあります。
ただし、目的は医師を責めることではありません。
医師にも入力ミスや伝達ミスが起こることはあります。
薬剤師側にも、記憶違いや確認漏れが起こることはあります。
患者さんの話を聞いて初めて分かる情報もあります。
だからこそ、気になる点があった時に、根拠を確認したうえで処方元へ確認する必要があります。
大切なのは、「これは間違っています」と決めつけることではありません。
「この処方にはどういう意図がありますか」「この患者さんの場合、この内容でよいでしょうか」と確認する姿勢です。
疑義照会は、医療者同士で確認して、患者さんの安全につなげるための仕事だと思います。
最初は「自分が知らないだけかも」と迷う
調剤経験が浅いころは、処方内容に違和感があっても、それが本当に確認すべき内容なのか、自分が知らないだけなのか判断できませんでした。
添付文書は基本的に確認します。
ただ、医師側では「これは基本」として扱われている内容まで、薬剤師側がすべて把握できているとは限りません。
たとえば、診療科ごとの治療方針、ガイドライン上の考え方、医師ごとの処方の出し方などです。
薬局では、処方箋を受け付けてから患者さんへ薬を渡すまでに、あまり長い時間をかけられないこともあります。
その限られた時間の中で、添付文書、薬歴、患者情報を確認しながら、疑義照会すべきか判断しなければなりません。
普段より量が少ない。
いつもと日数が違う。
特定の薬が組み合わされている。
前回処方と違う。
年齢や患者背景を考えると少し気になる。
こうした違和感があった時に、「医師の意図なのか」「自分が知らない使い方なのか」「確認すべき内容なのか」と迷うのは自然なことだと思います。
最初から完璧に判断するのは難しいです。
大切なのは、迷った時に感覚だけで判断しないことです。
疑義照会の前には、できる範囲で根拠と状況を整理する必要があります。
疑義照会前に根拠と状況を整理する
疑義照会をする時に大事なのは、「なんとなく気になる」だけで電話しないことです。
もちろん、処方箋を見た時の違和感は大事です。
ただ、処方元へ確認する時には、なぜ確認が必要だと思ったのかを説明できる状態にしておく必要があります。
私が疑義照会前に確認する根拠として、まず大前提になるのは添付文書です。
効能効果、用法用量、禁忌、併用注意、副作用、患者背景に関する注意などを確認します。
そのうえで、必要に応じてメーカー資料、治療ガイドライン、患者さんの副作用歴、アレルギー歴、併用薬、お薬手帳、薬歴なども見ます。
疑義照会は、「自分はこう思う」という感覚だけで行うものではありません。
あくまで、確認した情報や根拠に基づいて行うものだと思っています。
電話をする前には、次のような点を整理します。
処方箋のどこが気になるのか。
添付文書や資料上ではどうなっているのか。
前回処方と何が違うのか。
患者さんから聞き取った情報はあるか。
併用薬、副作用歴、アレルギー歴に気になる点はあるか。
処方変更をお願いしたいのか、処方意図を確認したいのか。
代替案を聞かれた時に答えられるか。
ここが曖昧なまま電話をすると、相手にうまく伝わりません。
自分でも、電話をかけてから「何を確認したかったのか」がぼやけてしまうことがあります。
疑義照会は、電話をかける前の準備でかなり変わります。
関連記事:添付文書はどこを見る?調剤薬局でまず確認したいポイント
電話では必要な情報を簡潔に伝える
疑義照会前には、根拠や患者情報をできる範囲で整理しておきます。
ただし、電話でその内容をすべて説明するわけではありません。
実際に処方元へ電話すると、最初に対応するのは医師ではなく、事務員や看護師であることが多いです。
その後、医師と直接話せる場合もありますが、事務員や看護師を介して回答をもらう場合もあります。
そのため、最初から長々と説明すると、かえって伝わりにくくなることがあります。
疑義照会では、事前準備は詳しく、電話で伝える内容は簡潔にすることが大切だと思います。
電話では、まず薬局名と名前を伝えます。
そのうえで、必ず「疑義照会です」と伝えます。
その後、患者さんの名前や生年月日など、処方元が患者さんを特定するための情報を伝え、確認したい点を簡潔に述べます。
たとえば、次のような流れです。
「〇〇薬局の□□です。処方箋について疑義照会でお電話しました」
「患者さんは〇〇様、生年月日は〇年〇月〇日です」
「〇〇錠の用量について確認です」
「添付文書上の通常量と異なるため、この内容でよいか確認をお願いします」
このくらい簡潔に伝えた方が、相手にも伝わりやすいと思います。
代替案や詳しい患者背景は、最初からすべて話す必要はありません。
もちろん、聞かれた時に答えられるよう、手元には準備しておきます。
ただ、最初の電話では、確認したい点を絞って伝える方がよいです。
疑義照会は、長く説明すればよいものではありません。
必要な情報を準備したうえで、相手が判断しやすい形にして短く伝えることが大切だと思います。
職場ごとの運用や過去の確認内容も確認する
転職して新しい職場になった時は、疑義照会の前に、その病院や医師との間にどのような運用があるのかを確認するようにしています。
いわゆる、職場ごとのプロトコルや暗黙の了解です。
処方内容だけを見ると確認した方がよさそうに見えても、過去に同じ内容を確認済みの場合があります。
病院との取り決めにより、一定の範囲なら薬局側で修正して後から連絡すればよい運用になっている場合もあります。
逆に、一見よくある処方に見えても、その医師には毎回確認した方がよい内容もあります。
これは、添付文書だけを見ていても分かりません。
その薬局で長く働いている人や、管理薬剤師に聞かなければ分からない部分です。
そのため、新しい職場では、自分だけで判断しきれない時に、まず管理薬剤師や経験の長い人に確認するようにしています。
「この処方はいつも出ていますか」
「過去に確認したことはありますか」
「この病院では薬局側で修正してよい運用ですか」
「この内容は疑義照会した方がよいですか」
こうした確認をするだけで、不要な疑義照会を避けられることもあります。
一方で、やはり処方元へ確認した方がよいと判断できることもあります。
新人のうちや、新しい職場に移ったばかりの時は、一人で抱え込まない方がよいです。
その職場で積み重なった処方傾向や確認履歴を確認することも、疑義照会前の大事な準備です。
代替案は聞かれた時に答えられるよう準備しておく
疑義照会で薬を変更してもらう可能性がある時は、代替案も準備しておく必要があります。
以前、処方内容について確認した時に、医師から「では、何の薬がよいですか」と聞かれて、すぐに答えられなかったことがありました。
こちらとしては、気になる点を確認するつもりで電話をしていました。
しかし、処方元からすれば、変更が必要なら代わりに何がよいのかを知りたい場面もあります。
この経験があってから、疑義照会をする時には、医師から聞かれた場合に提案できるよう準備しておくことを意識するようになりました。
もちろん、薬剤師が勝手に処方を決めるわけではありません。
最終的に何を処方するかを判断するのは医師です。
こちらの提案が採用されるとも限りません。
それでも、根拠を持って問い合わせをし、必要に応じて代替案を示せるようにしておくことは大切です。
たとえば、聞かれた時に次のように答えられると、話が進みやすくなります。
「同じ目的であれば、この薬も候補になるかと思います」
「過去にこの薬で副作用歴があるため、別の薬であれば〇〇が考えられます」
「併用薬を考えると、この薬の方が使いやすいかもしれません」
ただし、これらを最初から全部伝える必要はありません。
まずは疑義照会であること、患者情報、確認したい点を簡潔に伝える。
そのうえで、医師や処方元から聞かれた時に答えられるようにしておく。
代替案は、最初から話すためというより、聞かれた時にすぐ答えられるよう準備しておくものだと思います。
処方変更にならなくても意味がある
疑義照会をしても、必ず処方変更になるわけではありません。
最初のころは、処方変更にならないと「聞かなくてもよかったのかな」と思うこともありました。
しかし、今はそうは考えていません。
処方変更にならなくても、処方意図が確認できれば意味があります。
たとえば、基本から少し外れた量で出ている処方。
特定の薬が組み合わされている処方。
通常より少なめに薬が出ている処方。
前回とは違う出し方になっている処方。
こうした処方は、処方医に直接確認するか、その薬局で長く働いている人に聞かなければ、意図が分からないことがあります。
確認した結果、医師の意図が分かれば、患者さんにも説明しやすくなります。
薬歴にも残せます。
次回同じ処方が来た時の判断材料になります。
他の薬剤師にも共有できます。
疑義照会の意味は、処方変更だけではありません。
処方意図を確認し、今後の服薬指導や監査に生かせることにも意味があります。
関連記事:薬剤師が疑義照会するのはどんな時?|医師に確認する理由と実際の場面
疑義照会中は患者さんにも説明する
疑義照会は、どうしても時間がかかります。
その間、患者さんを待たせることになります。
そのため、処方元へ確認している間は、患者さんにも状況を説明するようにしています。
たとえば、私は次のような説明をすることがあります。
「安全にお薬をお渡しするために、処方内容を確認しています」
「念のため、処方元に確認してからお渡しします」
「確認に少しお時間をいただきます」
単に「病院に確認しています」とだけ伝えるよりも、安全に薬を使ってもらうための確認であることを伝えた方が、待ち時間の理由を理解してもらいやすいと感じます。
もちろん、詳しい疑義内容をそのまま患者さんに話す必要はありません。
患者さんを不安にさせる言い方も避けたいところです。
疑義照会中の患者さんへの説明は、長くなくてよいと思います。
ただ、何も伝えずに待たせるのではなく、処方内容を確認していることは伝えておいた方がよいです。
疑義照会後は薬歴に残す
疑義照会をした後は、薬歴に残すことも大切です。
処方変更になった時だけでなく、変更にならなかった場合でも、処方意図が分かったなら記録しておく意味があります。
何を確認したのか。
誰に確認したのか。
どのような回答だったのか。
処方変更はあったのか。
患者さんに何を説明したのか。
次回以降、何に注意するのか。
こうした内容が残っていると、次に同じような処方が来た時に役立ちます。
疑義照会は、一度行えば今後同じ内容が二度と起こらないというものではありません。
同じような処方が繰り返し来ることもあります。
別の薬剤師が同じ処方を見ることもあります。
その時に、過去の確認内容が薬歴に残っていれば、再度確認すべきか、過去の回答を踏まえて判断できるかを考えやすくなります。
また、過去の確認内容が残っていれば、患者さんに対しても説明しやすくなる場合があります。
薬歴は、単なる記録ではありません。
次回以降の判断時間を減らし、薬局内で情報を共有するための材料になります。
疑義照会は経験で少しずつ慣れていく
疑義照会は、最初からうまくできるものではありません。
何を確認すべきか迷うこともあります。
電話でうまく説明できないこともあります。
医師から質問されて、準備不足に気づくこともあります。
後から「先にここまで調べておけばよかった」と思うこともあります。
私自身も、そういう経験をしながら少しずつ慣れていきました。
大切なのは、分からないことをそのままにしないことです。
添付文書や資料を確認する。
薬歴を見る。
患者さんから情報を聞き取る。
先輩や管理薬剤師に相談する。
必要なら処方元へ確認する。
確認した内容を薬歴に残す。
この流れを繰り返していくことで、少しずつ判断材料が増えていきます。
疑義照会は、医師にダメ出しをする仕事ではありません。
患者さんに安全に薬を使ってもらうために、処方意図や患者状況を確認する仕事です。
処方変更になるかどうかだけでなく、処方意図を確認し、次回以降の判断につなげる。
その積み重ねが、薬剤師としての経験になっていくのだと思います。
疑義照会に慣れていない薬剤師へ
疑義照会に慣れていないうちは、怖いと感じるのは自然なことです。
医師に確認することに気が引ける。
自分が知らないだけではないかと迷う。
電話でうまく説明できるか不安になる。
そう感じること自体は、悪いことではありません。
むしろ、慎重に確認しようとしているからこそ出てくる不安だと思います。
ただし、不安だからといって、気になる処方をそのまま流してよいわけではありません。
疑義照会で大切なのは、相手を責めることではなく、根拠をもって確認することです。
添付文書、薬歴、患者情報、過去の確認内容を見たうえで、それでも確認が必要なら処方元へ問い合わせる。
そして、電話では必要な情報を簡潔に伝える。
聞かれた時に答えられるよう、代替案や患者背景は手元に準備しておく。
確認した内容は薬歴に残し、次回以降の判断につなげる。
この経験を積み重ねることで、疑義照会への怖さは少しずつ減っていくと思います。
新人薬剤師や調剤経験が浅い薬剤師ほど、一人で抱え込まず、相談できる人に相談しながら進めていけばよいと思います。
薬局実務に不安がある場合や、今の職場で十分に相談できないと感じる場合は、職場環境そのものを見直すことも選択肢の一つです。
転職を急ぐ必要はありません。
ただ、他の薬局ではどのような教育体制や相談環境があるのかを知っておくと、自分の働き方を考える材料になります。
薬剤師向けの転職サイトでは、求人票だけでは分かりにくい教育体制、処方科目、人数体制、管理薬剤師や先輩薬剤師のフォロー体制などを確認できる場合があります。
今すぐ転職するつもりがなくても、情報収集として見ておくのは一つの方法です。

