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調剤薬局で働き始めたころ、処方箋に書かれた薬の名前を見ても、それがどういう薬なのか簡単に説明できないことが多くありました。
薬の名前を見て、何の薬かが分からない。
これは、かなり困ります。
患者さんから「これは何の薬ですか?」と聞かれても答えにくいですし、処方箋を見ても「この患者さんは、今日は何のために病院にかかったのか」が見えにくくなります。
実際、私が調剤を始めたころは、投薬前に薬剤情報提供書を見て、「何に効く薬なのか」「どう説明すればよいのか」を確認していたくらい、知識が足りませんでした。
そのままでは仕事にならないと感じたため、分からない薬の添付文書を片っ端から集め、まずは効能効果と用法用量を見るようにしました。
添付文書は情報量が多く、最初からすべてを理解しようとすると大変です。
ただ、調剤薬局でまず確認したい場所はある程度決まっています。
この記事では、添付文書上で確認する内容、薬局で処方箋を見るときに意識したいポイント、患者さんへ説明するときの見方を分けて整理します。
添付文書は全部を暗記するものではない
まず前提として、添付文書は全部を暗記するものではありません。
もちろん、よく使う薬の効能効果、用法用量、禁忌、注意点などを覚えていれば、処方箋を見たときの判断は早くなります。
ただ、すべての薬の添付文書を丸暗記するのは現実的ではありません。
大切なのは、分からないときに正確な資料を確認できることです。
私が調剤を始めたころでも、パソコンを使えば添付文書の情報は確認できました。今であれば、必要な情報を調べる環境はさらに整っています。
また、薬剤師も人間なので、覚え間違いや記憶違いはあります。
「覚えているから大丈夫」と思い込むのではなく、必要な場面では添付文書で確認する習慣を持っておいた方がよいです。
調べた内容は、そのままにせず、自分が重要だと思った部分をメモしておくと覚えやすくなります。
手持ちのメモ帳でもよいですし、会社のルール上問題なければ薬歴のメモ欄などを活用する方法もあります。
調べる、記録する、同じ薬が出たときに見返す。
その繰り返しで、少しずつ現場で使える知識になっていきます。
まず見るのは効能効果
添付文書で最初に確認したいのは、効能効果です。
薬が何に使われるのかが分からなければ、患者さんに説明することも、処方の目的を考えることも難しくなります。
調剤を始めたころの私は、処方箋に薬名が並んでいても、それが何の薬なのかすぐに分からないことが多くありました。
そのため、まずは薬局でよく出る薬について、添付文書の効能効果を見るようにしました。
もちろん、添付文書上の効能効果と、医師が実際に狙っている症状の表現が完全に一致しないこともあります。
患者さんは「痛み止め」「かゆみ止め」「胃薬」といった言い方をすることが多く、添付文書ではもう少し専門的な表現で書かれています。
それでも、まず添付文書上で何に使われる薬なのかを確認することは重要です。
薬の目的が分かると、処方全体の見え方も変わります。
「この薬は何のために出ているのか」
「今回の受診理由と合っていそうか」
「患者さんにどう説明すればよいか」
こうしたことを考える土台になります。
添付文書の表現が難しい場合は、メーカーの患者向けページや患者向け資料を見ると、薬の目的をつかみやすいこともあります。
ただし、患者向け資料だけで判断するのではなく、薬剤師として正確な情報を確認する基本資料は、まず添付文書だと考えています。
関連記事:薬剤師の勉強は何から始める?現場で困らないための情報収集
用法用量は処方監査の基本
効能効果と同じくらい重要なのが、用法用量です。
処方された薬の量、回数、タイミングが、添付文書上の基本的な使い方から大きく外れていないかを確認します。
調剤を始めたころは、薬名を見ても効果が分からない状態だったため、当然、正しい用法用量も自信を持って判断できませんでした。
薬によっては、用法用量に幅があります。
1日何回使うのか、どのくらいの量まで使えるのか、患者さんの状態に応じて増減できるのかなど、薬ごとに確認が必要です。
添付文書には「適宜増減」と書かれていることもありますが、だからといって何でもよいという意味ではありません。
通常の範囲、年齢、体重、腎機能、症状などを踏まえて考える必要があります。
特に小児や高齢者では、成人と同じ量でよいとは限りません。
年齢や体重によって量を調整することがありますし、高齢者では腎機能の低下などを考える必要がある場合もあります。
最初のころは、このあたりが非常にややこしく感じました。
それでも、一つずつ覚えていくしかありません。
私の場合、時間があるときには添付文書や薬剤情報提供書を見て、よく出る薬から少しずつ確認していました。
投薬前にも薬剤情報提供書を確認し、必要に応じて添付文書で用法用量を確認する。
少なくとも、自分の薬局でよく出る薬を一通り覚えるまでは、その確認を続けていました。
添付文書で用法用量や使える年齢を把握していると、実際にその対象から外れた患者さんに処方が出たときに気づきやすくなります。
実際、用量や年齢が気になり、処方元への確認につながったことは何度もあります。
医師も毎回すべてを完璧に入力できるわけではありません。単なる入力ミス、勘違い、覚え違いが起こることもあります。
一方で、薬剤師側にも記憶違いはあります。
だからこそ、記憶だけで判断せず、添付文書で確認することが大切です。
関連記事:薬剤師は処方箋のどこを見ている?|薬をそろえる前に確認していること
禁忌は見落とせない
添付文書を見るときに、禁忌は必ず確認したい項目です。
禁忌とは、その薬を使ってはいけない条件のことです。
薬剤アレルギー、特定の疾患、妊娠に関する条件、併用してはいけない薬などが関係します。
禁忌に該当する場合は、患者さんに不利益が出る可能性があるため、見落とすわけにはいきません。
ただし、添付文書に書かれている禁忌を見ただけで、すぐにすべて判断できるとは限りません。
薬歴、お薬手帳、患者さんから聞き取った情報、過去の副作用歴、既往歴なども合わせて確認する必要があります。
最初からすべての薬の禁忌を覚えるのは難しいですが、よく出る薬から少しずつ確認していくと、「この薬はこの点に注意する」という感覚が少しずつ身についていきます。
併用注意・相互作用を見る
併用注意や相互作用も、添付文書で確認したい項目です。
調剤薬局では、処方箋に書かれている薬だけを見ればよいわけではありません。
他院から出ている薬、市販薬、サプリメントなどを併用している場合もあります。
お薬手帳や薬歴を確認し、併用している薬との飲み合わせに問題がないかを見ていく必要があります。
ただし、添付文書に併用注意と書かれているからといって、必ず中止になるわけではありません。
併用の必要性、患者さんの状態、検査値、医師の判断などによって、実際の対応は変わります。
大切なのは、添付文書で注意点を確認し、疑問があればそのままにしないことです。
「併用注意に書いてあるから全部だめ」と考えるのではなく、何に注意して使う必要があるのかを確認することが大切です。
関連記事:薬局でお薬手帳を出す意味|薬剤師はどこを見ているのか
副作用は「起こりやすいもの」と「重大なもの」を見る
副作用も、添付文書で確認したい項目です。
ただし、副作用は非常に多岐にわたります。
薬の作用から考えて起こり得るものもあれば、因果関係がはっきりしないものもあります。
副作用が全く起こらない薬はありません。
だからといって、添付文書に書かれている副作用をすべて患者さんに伝えればよいわけでもありません。
副作用を伝えすぎると、患者さんが不安になり、薬を使えなくなることがあります。
一方で、全く伝えないと、実際に症状が出たときに驚かせてしまうこともあります。
そのため、添付文書を見るときは、起こりやすい副作用と、放置すると重大な影響がある副作用を中心に確認するとよいと思います。
たとえば、眠気が問題になる薬であれば、患者さんが生活上で何に気をつけるべきかを考える必要があります。
ただし、このあたりは「添付文書をどう見るか」だけでなく、「患者さんにどう伝えるか」という話にもなります。
そのため、この記事では深掘りしません。
ここでは、添付文書を見るときに、単に副作用名を眺めるだけではなく、患者さんに注意してもらうべき副作用は何かを考えることが大切だと押さえておけばよいと思います。
高齢者・小児・妊婦授乳婦・腎機能低下時の注意を見る
添付文書を見るときは、薬そのものの情報だけでなく、その患者さんに使ってよいかも確認します。
特に、高齢者、小児、妊婦、授乳婦、腎機能や肝機能に不安がある患者さんでは、注意が必要になることがあります。
私が調剤薬局に勤め始めたころ、先輩薬剤師から「その薬が肝臓と腎臓のどちらの影響を受けやすいかを見た方がよい」と言われたことがあります。
特に腎排泄型の薬では、腎機能の数値によって用量を調整する必要がある場合があります。
最初は難しく感じましたが、用法用量を見るだけでなく、患者背景によって確認する場所が変わることを学びました。
実際に、検査値によって薬の量が変わることはあります。
特に体重や腎機能は、用量に関係する場面があります。
場合によっては、その患者さんには使いにくい薬もあります。
処方内容を見て、すぐに処方元へ確認している先輩薬剤師の姿を見たこともあります。
その時は、確認の結果として処方が変更になりました。
こうした対応は、薬の特徴を知らなければすぐには動けません。
ただし、最初からすべての患者さんの検査値を完璧に把握するという意味ではありません。
自分の薬局でよく出る薬の中から、「この薬は体重に注意する」「この薬は腎機能を確認する」「この薬は肝機能に注意する」といった形で、少しずつ覚えていけばよいと思います。
適用上の注意・薬の使い方も見る
内服薬だけでなく、外用薬、吸入薬、点鼻薬、点眼薬、貼付剤などでは、使い方の確認も重要です。
薬の効果や用法用量が分かっていても、使い方を正しく説明できなければ、患者さんがうまく使えないことがあります。
特に吸入薬や点鼻薬では、メーカーの指導せんが付いていることが多く、服薬指導に役立ちます。
ただし、指導せんにすべての情報が載っているとは限りません。
実際、吸入薬を使い切った後の廃棄方法について、指導せんには載っていなかったものの、メーカー資料には記載があったことがありました。
そのような場合は、指導せんだけで判断せず、添付文書やメーカー資料も確認します。
外用薬や吸入薬では、薬の成分だけでなく、使い方、保管方法、使用後の扱いなども患者さんの理解に関わります。
添付文書の「適用上の注意」やメーカー資料を確認することで、説明の抜けを減らすことができます。
添付文書だけで判断しにくい時もある
添付文書は、薬剤師が薬の基本情報を確認するための重要な資料です。
ただし、添付文書だけで実務上の疑問がすべて解決するわけではありません。
添付文書は正確な情報が載っている一方で、表現が専門的で、最初のうちは分かりにくいこともあります。
その場合は、メーカーの患者向け資料や患者向けページを見ると、薬の目的や説明の仕方をつかみやすいことがあります。
もう少し詳しく確認したい場合は、インタビューフォームやメーカーの公式資料を確認することもあります。
必要に応じてメーカーへ確認する場合もありますが、この記事では詳しく扱いません。
ここでは、添付文書は基本資料ではあるものの、必要に応じてインタビューフォームやメーカー資料なども確認することがある、という程度に考えておけばよいと思います。
知らない薬が出たときの確認順
知らない薬や自信がない薬が出たときは、私はまず効能効果を確認します。
何に使う薬かが分からなければ、患者さんに説明することも、処方目的を考えることも難しいからです。
次に、用法用量を確認します。
1回量、1日量、服用回数、服用タイミング、小児量、高齢者への注意などを見ます。
そのうえで、その患者さんに使えるかどうかを確認します。
年齢、妊娠・授乳、腎機能や肝機能、体重、併用薬、禁忌、併用注意、副作用などを確認します。
順番は多少前後しても問題ありません。
処方内容によっては、最初に禁忌や相互作用を確認することもあります。
大切なのは、確認すべきことを飛ばさないことです。
添付文書を見る目的は、知識を増やすことだけではありません。
処方内容が患者さんに合っているかを確認し、安全に薬を使ってもらうためです。
添付文書だけで判断しにくいときに確認する資料
処方内容を確認するとき、まず見る資料は添付文書です。
医療用医薬品の添付文書は、PMDAの「医療用医薬品 添付文書等情報検索」でも確認できます。
ただし、添付文書だけでは判断しにくいこともあります。たとえば、開封後の使用期限、保管条件、粉砕・一包化・簡易懸濁の可否、吸入薬や点鼻薬の細かい使い方などは、添付文書だけでは十分に分からない場合があります。
そのようなときは、インタビューフォーム、メーカーの患者向け資材、公式FAQ、指導せん、メーカーへの問い合わせなども確認します。
薬局では、添付文書を確認して終わりではなく、「この患者さんにこの処方内容で問題がないか」「患者さんが正しく使えるか」まで考える必要があります。添付文書はその出発点であり、必要に応じて他の資料も組み合わせて確認します。
まとめ
添付文書は、薬剤師が薬の正確な情報を確認するための基本資料です。
ただし、最初からすべてを暗記する必要はありません。
調剤薬局でまず確認したいのは、効能効果、用法用量、禁忌、併用注意、副作用、高齢者・小児・妊婦授乳婦・腎機能低下時の注意、適用上の注意などです。
新人薬剤師やブランク明け薬剤師は、まず自分の薬局でよく出る薬から確認していくのが現実的です。
処方箋を見て不安に感じたこと、患者さんから聞かれたこと、先輩に確認されたことをきっかけに、添付文書を見る習慣をつけていくとよいと思います。
添付文書を読む目的は、すべてを覚えることではありません。
必要な情報を正確に確認し、その患者さんに安全に薬を使ってもらうためです。
添付文書を見ながら学ぶことは大切ですが、新人薬剤師やブランク明け薬剤師にとっては、質問しやすい環境や教育体制も重要です。
転職を考える場合は、年収や勤務時間だけでなく、研修体制、薬剤師の人数、処方内容、相談しやすさも確認しておくとよいと思います。
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