調剤でピッキングミスしやすい薬|薬剤師が現場で意識している間違えにくくする工夫

薬局薬剤師の働き方

調剤薬局で働いていると、ピッキングミスを防ぐことの大切さを日々感じます。

ピッキングとは、処方内容に合わせて薬を棚から取りそろえる作業のことです。
外から見ると、処方箋に書かれた薬を棚から取るだけに見えるかもしれません。

しかし実際には、薬品名、規格、剤形、数量、包装、棚の配置など、確認しなければいけない点がいくつもあります。

この記事で挙げる例の中には、私自身が実際にピッキングで間違えたことがあるものも含まれています。いずれも患者さんにお渡しする前に気づいたものですが、だからこそ、ピッキングミスは誰にでも起こり得るものとして考える必要があると感じています。

今回は、調剤でピッキングミスしやすい薬の例と、現場で意識している確認方法について書いていきます。

ピッキングミスは経験が浅い人だけの問題ではない

ピッキングミスというと、新人薬剤師や経験の浅い薬剤師が起こしやすいもの、という印象があるかもしれません。

もちろん、薬の名前や規格に慣れていない時期は、間違えやすい場面があります。
ただ、経験を積めばピッキングミスが完全になくなるかというと、そうではありません。

今でも、ピッキングミスをすることはあります。
自分で気づくこともあれば、監査してくれた薬剤師に教えてもらうこともあります。投薬中に違和感を持って気づいたこともあります。

忙しい時間帯は当然ミスが起こりやすくなります。
しかし、余裕がある時間帯なら絶対に間違えないかというと、そうでもありません。

慣れている薬ほど、「いつもの規格だろう」「この棚にはこの薬があるはずだ」「この見た目ならこれだろう」と思い込んで動いてしまうことがあります。

ピッキングミスは、薬を知らないから起こるだけではありません。
知っている薬、よく出る薬、見慣れた薬でも、思い込みによって起こることがあります。

ピッキングミスには種類のミスと数量のミスがある

ピッキングミスには、大きく分けると2つあります。

1つは、違う薬を取ってしまうミスです。
名前が似ている薬、規格が違う薬、剤形が違う薬、棚で隣に置かれている薬などを取り違える場合です。

もう1つは、薬は合っているものの、取りそろえる数を間違えるミスです。
錠数、包数、枚数、本数などを間違える場合がこれにあたります。

処方内容を読む段階で、薬品名や規格を見落とす。
棚から薬を取る段階で、隣の薬や似た箱を取ってしまう。
数をそろえる段階で、錠数や包数を間違える。

このように、ピッキングでは複数の段階でミスが起こり得ます。

画像では確認ポイントをわかりやすくするために赤丸や蛍光ペンを入れています。実際には、毎回すべてに印をつけるというより、普段と違う規格・剤形が出た時や、他の薬と日数が異なる時に印をつけることがあります。
後から見返した時に気づきやすくなり、監査する人への注意喚起にもなります。

名前が似ている薬は最後まで確認する

名前が似ている薬は、ピッキングミスにつながりやすいです。

たとえば、ベポタスチンとベタヒスチンのように、名前の雰囲気が似ている薬があります。
最初の数文字や見た目の印象だけで判断すると、取り違える可能性があります。

薬品名は、最初だけでなく最後まで確認することが大切です。

特に忙しい時は、処方内容を見た瞬間に「これはあの薬だ」と思い込んでしまうことがあります。
その思い込みが、ピッキングミスにつながります。

漢方薬は名前・番号・1包量に注意する

漢方薬も注意が必要です。

葛根湯と葛根湯加川キュウ辛夷のように、名前の前半が同じ漢方薬があります。
漢方薬は名前が長いものも多く、前半だけを見て判断すると間違える可能性があります。

また、漢方薬は番号で覚えていることもあります。
番号で判断すること自体が悪いわけではありませんが、番号だけでなく薬品名も確認する必要があります。

さらに、漢方薬の粉は、1包あたりの量にも注意が必要です。1包2.5g、3g、3.75gなど、製品によって量が異なることがあります。
同じように「1包」と書かれていても、1包あたりの量が違う場合があるため、薬品名だけでなく、1包量まで確認するようにしています。

漢方薬では、薬品名、番号、1包量をまとめて確認することが大切だと感じています。

複数規格がある薬は数字を見落とさない

同じ薬品名でも、複数の規格がある薬があります。

たとえば、ムコダイン錠には250mgと500mgがあります。
薬品名だけを見て「ムコダインだ」と判断してしまうと、規格を見落とす可能性があります。

複数規格がある薬では、薬品名だけでなく数字まで確認する必要があります。

私自身、複数規格がある薬では、処方内容の写しの数字に丸をつけたり、規格の部分に蛍光ペンを引いたりして、数字に目が行くようにすることがあります。

もちろん、職場のルールに従う必要はあります。
そのうえで、規格違いを防ぐには、数字を意識して見る工夫が必要だと思っています。

剤形やデバイスの違いも見落としやすい

薬品名がほとんど同じでも、剤形が違う薬があります。

たとえば、リンデロンVG軟膏とリンデロンVGクリームは、名前の大部分が同じです。
しかし、軟膏とクリームでは剤形が違います。

ヒルドイドソフト軟膏とヒルドイドクリームも、処方箋上では似た印象を受けることがあります。
見た目は違っても、処方内容を読む段階で思い込みが入ると、剤形を見落とす可能性があります。

内服薬でも、普通錠とOD錠、カプセルと錠剤など、同じ成分でも剤形が違うものがあります。
吸入薬では、同じような名前でもデバイスが違うことがあります。

剤形やデバイスは、薬品名の後ろの方に書かれていることもあります。
だからこそ、薬品名は最後まで確認する必要があります。

箱やシートの見た目が似ている薬もある

ピッキングミスは、処方内容を読む段階だけで起こるわけではありません。
実際に棚から薬を取る時にも、間違えることがあります。

同じメーカーの薬では、箱の大きさやデザインが似ていることがあります。
また、メーカーが違っていても、箱やシートの色合い、全体の印象が似ていることもあります。

見た目だけで判断すると、薬品名を確認したつもりになってしまうことがあります。

ここで大切なのは、棚のラベルだけを見て安心しないことです。
棚に書かれている名前を見るのではなく、実際に自分が取り出した薬の名前を見るようにしています。

棚の位置が合っていても、中に違う薬が入っている可能性はゼロではありません。たとえば、薬を戻す時に別の棚や別の箱に片づけてしまうこともあり得ます。
そのため、棚のラベルではなく、最終的には自分が手に取った薬そのものを確認するようにしています。

貼付剤はサイズ・枚数・剤形に注意する

貼付剤も、ピッキングで注意が必要な薬です。

湿布やテープ剤は、よく出る薬だからこそ思い込みが起こりやすいです。
同じような名前でも、サイズが違うことがあります。
包装あたりの枚数が違うこともあります。
パップ剤とテープ剤のように、剤形が違う場合もあります。

特に整形外科の処方が多い職場では、貼付剤を扱う機会が多くなります。
よく出る薬ほど、慣れで取らないように注意しています。

数量ミスはシート単位の思い込みで起こることがある

ピッキングミスというと、違う薬を取ってしまうことを思い浮かべるかもしれません。
しかし、薬は合っていても、数量を間違えることがあります。

内服薬は、1シート10錠のものが多いです。
そのため、つい「1シート=10錠」という感覚で数えてしまいそうになることがあります。

しかし、薬によっては1シートの錠数が違うものもあります。
たとえば、リパクレオンは1シート12カプセル、リアルダは1シート8錠です。一般的な「1シート10錠」の感覚で数えると、数量ミスにつながる可能性があります。
もちろん、採用品の包装単位は薬局ごとに確認が必要です。

また、1シート10錠の薬であっても、端の2錠だけ切り取られていて、実際には8錠しか残っていないこともあります。
見た目では1シートのように見えても、実際の錠数が合っているとは限りません。

数量ミスを防ぐには、シート単位で思い込まず、最終的には実際の錠数を確認することが大切です。

棚で隣にあるだけでも取り違えることがある

棚で隣にある薬は、名前や見た目が似ていなくても取り違えることがあります。

全く別の薬でも、手の動きや棚の位置の記憶で取ってしまうことがあります。
特に、よく出る薬や慣れている薬では、「このあたりにあるはず」という感覚で動きやすくなります。

だからこそ、棚の位置ではなく、最後は手に取った現物で確認することが大切です。

棚から取った後に、手に持っている薬そのものを見る。
薬品名、規格、剤形を確認する。
この基本的な確認を省略しないことが、ピッキングミスを減らすことにつながります。

新人薬剤師には「ゆっくり焦らずに」と伝えたい

新人薬剤師に仕事を教える時、私はまず「ゆっくり焦らずに」と伝えたいです。
これはピッキングに限った話ではありません。処方入力、調剤、監査、服薬指導など、どの業務でも焦ると確認が抜けやすくなります。

「数に気をつけて」と言えば、数には注意してくれるかもしれません。
しかし、その分、薬品名や規格への意識が薄くなることもあります。

もちろん、薬品名、規格、剤形、数量を見ることは大切です。
ただ、焦って作業すると、どこかの確認が抜けやすくなります。

ピッキングを数秒早くしても、患者さんへのお渡しまでの時間は大きく変わりません。
一方で、間違えれば確認や修正に時間がかかります。患者さんにも負担をかける可能性があります。

早く取ることより、正しく取ること。
まずは落ち着いて、処方内容と現物を一つずつ確認することが大切だと思っています。

個人の注意だけでなく、仕組みで防ぐことも大切

ピッキングミスを防ぐには、個人の注意だけでは限界があります。

一度ミスした薬は、その後かなり意識するようになります。
数字に丸をつける、規格部分に蛍光ペンを引く、現物の薬品名を確認するなど、自分なりに確認方法を変えることもあります。

それでも、ミスが完全になくなるわけではありません。

だからこそ、薬局全体として、間違えにくい仕組みを作ることも大切です。

たとえば、病院と連携して、そもそも複数規格を必要以上に在庫しないようにする。
用量調整は半錠や錠数の調整で対応する。
同一成分で複数メーカーを在庫しない。
似た薬品名や複数規格の薬を棚で隣同士に置かない。
複数規格がある薬には「複数規格あり」、類似名称の薬には「類似名称あり」といった注意表示をつける。

こうした工夫があると、個人の注意力だけに頼らず、ミスに気づきやすくなります。

すべての薬局で同じようにできるわけではありません。
採用品、在庫、処方元との関係、店舗のスペースによって、できることは変わります。

それでも、間違えやすい薬を把握し、棚の配置や注意表示を工夫することは、ピッキングミスを減らすために重要だと思います。

まとめ

ピッキングミスは、経験が浅い人だけが起こすものではありません。

知っている薬、よく出る薬、慣れている薬でも、思い込みによって間違えることがあります。
忙しい時だけでなく、余裕がある時間帯でもミスは起こり得ます。

だからこそ、薬品名を最後まで見る。
規格や剤形を確認する。
棚のラベルだけでなく、取り出した現物を見る。
数量をシート単位で思い込まない。
焦らず、一つずつ確認する。

こうした基本的な確認を、忙しい時ほど省略しないことが大切です。

ピッキングミスは、気をつければ完全になくなるという単純なものではありません。
だからこそ、個人の確認方法と、薬局としての仕組みの両方で、間違えにくくする工夫が必要だと感じています。

新人薬剤師や薬学生の方には、まず「ゆっくり焦らずに」確認することを大切にしてほしいです。
早く取ることより、正しく取ること。
それが、安全な調剤につながると思います。

※補足
本文中の商品名は、調剤時の確認ポイントを説明するための例として記載しています。包装単位などは採用品や時期により異なる可能性があるため、実際の業務では各薬局で採用している製品・包装を確認してください。

関連記事:薬をそろえる前に処方箋のどこを確認しているかは、「薬剤師は処方箋のどこを見ている?」でまとめています。

関連記事:新人薬剤師が調剤薬局でつまずきやすい点は、「新人薬剤師が調剤薬局でつまずきやすいこと」でまとめています。