薬局で薬をもらうまでに、思ったより時間がかかると感じたことがある人は多いと思います。
病院で診察を受け、会計も終わり、あとは薬を受け取るだけ。
それなのに薬局でまた待つことになると、
「薬を棚から取るだけではないのか」
「前と同じ薬なのに、なぜ時間がかかるのか」
「待合室に人が少ないのに、どうして呼ばれないのか」
と疑問に思うこともあるかもしれません。
特に体調が悪いとき、子どもを連れているとき、仕事や予定の合間に薬局へ来ているときは、少しの待ち時間でも負担に感じることがあります。
もちろん、待ち時間は短いに越したことはありません。
薬局側も、できるだけ早く、正確に薬をお渡しする必要があります。
ただ、薬局で行っていることは、薬を棚から取って袋に入れるだけではありません。
処方内容の確認、薬の準備、粉薬やシロップの調製、一包化、半錠、軟膏の混合、在庫確認、必要に応じた医療機関への確認など、見えにくい作業がいくつもあります。
また、待合室にいる人数が少なく見えても、先に受け付けた患者さんの薬に時間がかかっている場合もあります。
この記事では、薬局で薬をもらうまでに時間がかかる理由について、待ち時間の裏側で薬剤師がしていることを説明します。
薬局の待ち時間は、待合室の人数だけでは決まらない
薬局で待っているとき、待合室に人が少ないと、
「今は空いていそうなのに、なぜ時間がかかるのだろう」
と感じることがあるかもしれません。
ただ、薬局の待ち時間は、待合室に見えている人数だけで決まるわけではありません。
先に受け付けた患者さんの薬を準備している場合もあります。
病院からFAXで処方箋が届いていたり、処方箋送信アプリで先に処方内容が送られていたりする場合もあります。
また、処方内容に確認が必要で、医療機関へ問い合わせをしている途中の処方があることもあります。
在庫の確認や取り寄せの対応をしていることもあります。
つまり、薬局の中では、待合室から見えている患者さん以外の処方も同時に動いていることがあります。
そのため、薬局にいる人数が少なく見えても、薬局内の作業量が少ないとは限りません。
薬局では薬を取るだけでなく、確認と準備をしている
薬局では、処方箋を受け取ったあと、すぐに薬を準備して渡しているわけではありません。
薬の名前、量、飲み方、日数などを確認します。
患者さんの年齢、体質、アレルギー歴、副作用歴、他に飲んでいる薬なども確認します。
処方内容によっては、飲み合わせや重複、用量に問題がないかを確認する必要があります。
ただ、今回の記事で特に伝えたいのは、薬剤師の確認作業だけではありません。
薬局で時間がかかる理由には、薬そのものを準備する工程も大きく関係しています。
薬の形や処方内容によっては、通常の錠剤をそのまま渡す場合よりも、準備に時間がかかることがあります。
処方箋を受け取ったあと、薬剤師がどこを確認しているかについては、こちらの記事でも整理しています。
関連記事:薬剤師は処方箋のどこを見ている?薬をそろえる前に確認していること
粉薬やシロップは調製に時間がかかることがある
粉薬やシロップは、大人に処方されることもありますが、子どもの処方で見かけることが多い薬の形です。
子どもの患者さんが多い薬局では、粉薬やシロップの処方が増えやすくなります。
そのため、どうしても薬の準備に時間がかかる場面があります。
粉薬は、薬を棚から取って終わりではありません。
処方された量を確認し、必要な量をはかり、場合によっては複数の薬を混ぜ、分包します。
小児の場合は、体重や年齢に合わせて量が調整されていることもあるため、量の確認も大切です。
シロップも同じです。
日数分の量を確認し、必要に応じて混合し、容器に入れて準備します。
薬によっては、保存方法、飲む前に振る必要があるか、飲ませ方なども説明する必要があります。
もちろん、粉薬やシロップがあるから待ち時間が長くて当然、という話ではありません。
ただ、錠剤をそのまま準備する場合と比べると、粉薬やシロップでは作業の工程が増えることがあります。
先に受け付けた人の薬に時間がかかっていることがある
自分の薬はすぐに準備できそうな内容でも、先に受け付けた患者さんの薬に時間がかかっていることがあります。
たとえば、先に来た患者さんの処方に、粉薬、シロップ、一包化、軟膏の混合などが含まれている場合です。
薬剤師やスタッフの人数に余裕があれば、並行して対応できることもあります。
しかし、人数が少ない時間帯や、機械を使って準備する薬が重なっている場合は、すべてを同時に進めることは難しくなります。
その場合、後から来た患者さんの薬が簡単な内容だったとしても、すぐにお渡しできないことがあります。
薬局では、基本的には受付順や処方内容を見ながら準備を進めています。
ただし、処方内容、スタッフの人数、機械の使用状況によって、待ち時間は変わります。
待合室の人数が少なくても、薬局の中では別の処方の準備が進んでいることがあります。
半錠や一包化は作業と確認の工程が増える
半錠の薬がある場合、錠剤を半分に割る作業が必要になることがあります。
ただし、単に割れば終わりというわけではありません。
その薬が半分にして使える薬か、処方された量として問題ないか、薬袋や分包紙に薬の名前や飲み方が分かるように記載されているかなどを確認します。
一包化の場合は、さらに作業量が増えることがあります。
一包化とは、複数の薬を朝・昼・夕・寝る前など、飲むタイミングごとにまとめることです。
飲み間違いを減らす助けになる一方で、薬の種類や日数が多いほど、準備と確認に時間がかかります。
一包化した後も、薬の種類や数、飲むタイミングが合っているかを確認します。
そのため、一包化は患者さんにとって便利な方法である一方、薬局側では通常よりも準備に時間がかかりやすい作業です。
軟膏やクリームを混ぜる処方も時間がかかる
皮膚科の処方では、軟膏やクリームを混ぜて渡すことがあります。
チューブのまま渡す場合と違い、混合がある場合は、量をはかり、均一に混ぜ、容器に詰める工程があります。
見た目には単純な作業に見えるかもしれませんが、実際には調製と確認に時間がかかることがあります。
また、薬によっては、塗る部位、塗る回数、使う順番、保管方法などの説明が必要になることもあります。
軟膏やクリームの混合が重なると、待ち時間に影響することがあります。
在庫確認や取り寄せが必要になることもある
薬局に、すべての薬が常に十分そろっているとは限りません。
処方された薬が薬局にない場合や、必要な量が足りない場合には、在庫確認や取り寄せが必要になることがあります。
近年は、医療用医薬品の中にも、供給が安定しない品目があります。
実際に、医療用医薬品では限定出荷や供給停止となる品目が出ることもあります。
その場合、近隣の薬局に確認したり、医薬品を納入する会社に確認したり、必要に応じて医療機関へ相談したりすることがあります。
ただし、すべての在庫不足が全国的な供給不安によるものとは限りません。
薬局ごとの在庫状況、処方内容、必要な量によっても変わります。
在庫確認や取り寄せが必要になると、通常よりも時間がかかることがあります。
医療機関への確認が必要になると時間がかかることがある
処方内容に確認が必要な点がある場合、薬局から病院やクリニックへ確認することがあります。
たとえば、薬の量、飲み方、日数、併用薬との関係などで確認が必要になることがあります。
この場合、薬局内だけで完結できません。
医療機関へ連絡し、返答を待ってから薬を準備する必要があります。
そのため、医療機関への確認が必要になると、待ち時間が長くなることがあります。
薬剤師が「医師に確認します」と言うときは、薬を安全に渡すために確認している場合があります。
薬剤師が医療機関に確認する「疑義照会」については、こちらの記事でも整理しています。
関連記事:薬剤師が疑義照会するのはどんな時?|医師に確認する理由と実際の場面
処方箋を事前に送っても、すぐ受け取れるとは限らない
最近では、処方箋送信アプリを使ったり、病院から薬局へ処方箋をFAXしたりして、事前に処方内容を送れる場合があります。
事前に処方箋が届いていれば、薬局側が先に内容を確認し、準備を進められることがあります。
そのため、待ち時間の短縮につながる場合があります。
ただし、処方箋を事前に送っておけば、薬局に着いた時点で必ず薬が用意できているとは限りません。
処方内容に確認が必要な点がある場合もあります。
患者さん本人に、体調、副作用、残薬、他に飲んでいる薬などを確認する必要がある場合もあります。
連絡先が分かっていて、事前に確認できる場合もあります。
しかし、連絡が取れない場合や、確認が必要な内容によっては、薬局に来てから確認することになります。
その場合、事前に処方箋を送っていても、来局後に確認してから準備を進めるため、待ち時間が発生することがあります。
処方箋の事前送信は便利な方法です。
ただし、待ち時間を必ずゼロにできるものではありません。
薬の準備が終わっても、すぐに渡せないことがある
薬そのものの準備が終わっていても、すぐに患者さんへ渡せるとは限りません。
薬を渡す前には、薬の種類、数、飲み方、日数などを確認します。
処方内容と薬が合っているか、患者さんに説明すべき点がないかを確認します。
新しく追加された薬、飲み方が変わった薬、注意が必要な薬がある場合は、説明にも時間がかかることがあります。
また、前の患者さんへの説明が長くなっている場合、薬の準備が終わっていても、少し待つことがあります。
薬局では、薬を準備する時間だけでなく、確認して説明する時間も必要になります。
薬局で体調や残薬などを確認される理由については、こちらの記事でも整理しています。
関連記事:薬局で毎回いろいろ聞かれる理由|薬剤師が確認していること
待ち時間が長ければよいという話ではない
ここまで、薬局で待ち時間が発生する理由について説明してきました。
ただし、理由があるからといって、待ち時間が長くてよいという話ではありません。
薬局側も、できるだけ早く、正確に薬を渡せるように工夫する必要があります。
患者さんにとって、待ち時間が負担になることは当然あります。
一方で、早さだけを優先して確認が不十分になると、薬の間違い、説明不足、飲み間違いにつながる可能性があります。
薬局では、早く薬を渡すことと、安全に薬を渡すことの両方が求められます。
そのバランスを取りながら対応しているため、処方内容によってはどうしても時間がかかることがあります。
待ち時間を少し短くするためにできること
待ち時間を少しでも短くするために、患者さん側でできることもあります。
たとえば、処方箋送信アプリを使える薬局では、事前に処方箋を送っておくことで、薬局側が準備を進めやすくなることがあります。
お薬手帳を持っていくことも大切です。
他の病院でもらっている薬や、過去に使った薬が分かると、確認がスムーズになることがあります。
薬が余っている場合は、受付時や薬剤師に早めに伝えるとよいです。
残薬の確認が必要な場合、あとから分かるよりも、先に分かっていた方が対応しやすくなります。
市販薬やサプリメントを使っている場合も、必要に応じて伝えてください。
薬との飲み合わせを確認しやすくなります。
時間に余裕がない場合は、受付時に相談すると、状況によっては対応方法を提案できることがあります。
ただし、これらは「患者さんが悪い」という話ではありません。
情報がそろっていると、確認がスムーズになることがある、という話です。
まとめ
薬局で薬をもらうまでの待ち時間は、薬を棚から取るだけの時間ではありません。
処方内容の確認、薬の準備、粉薬やシロップの調製、半錠、一包化、軟膏の混合、在庫確認、医療機関への確認など、複数の工程があります。
また、待合室にいる人数が少なくても、先に受け付けた処方の内容によって待ち時間が長くなることがあります。
処方箋を事前に送っていても、確認事項があれば、来局後に確認してから準備を進める場合があります。
もちろん、待ち時間は短いに越したことはありません。
薬局側も、早く正確に薬を渡せるように工夫する必要があります。
ただ、薬を安全に渡すためには、一定の確認と準備の時間が必要になることがあります。
薬局の待ち時間には、待合室からは見えにくい理由があります。
その理由を知っておくと、薬局で薬を待つ時間の受け止め方が少し変わるかもしれません。

