大手調剤併設ドラッグストアで約5年半働いたあと、私は内科と呼吸器科を診療しているクリニックの門前薬局で約1年間働くことになりました。
それまでに調剤の基本や患者さんへの対応はある程度経験していましたが、内科・呼吸器科を中心に処方を受ける薬局では、また違った学びがありました。
大手調剤併設ドラッグストアでは、幅広い処方に対応する力や、忙しい中で優先順位をつけて動く力を学びました。
一方で、内科・呼吸器科クリニックの門前薬局では、同じ患者さんを継続して見ていくことや、いつもと変わりがないかを確認することの大切さを感じました。
勤務期間としては1年と長くありませんでした。
それでも、薬剤師としての見方が少し変わる経験だったと思います。
内科の処方では、継続処方の確認が中心だった
内科の処方を受けていて感じたのは、継続して通院している患者さんが多いということです。
新規の患者さんがまったくいないわけではありませんが、私が経験した薬局では、以前から同じクリニックに通っていて、同じような薬を継続している方が多くいました。
そのため、毎回大きく処方が変わるというよりは、前回までと同じ薬を確認し、体調や服薬状況に大きな変化がないかを見ていく場面が多かったです。
薬歴を見ても、毎回大きく内容が変わるわけではありません。
むしろ、いつもと違うことが書かれているときは、処方変更があったり、体調に変化があったり、何か確認すべきことがある場合でした。
内科の処方では、「何も起こっていないことを確認する」場面が多かったように思います。
処方内容だけを見ると、対応しやすいと感じる場面もありました。
急に多数の薬が追加されることは少なく、薬が追加になる場合でも、まずは1種類追加して様子を見る、という流れが多かったです。
また、大きな病院のように最先端の治療に触れる機会が多いわけではありません。
初めて扱う薬が頻繁に出る、ということもほとんどありませんでした。
その意味では、処方内容だけを見れば、比較的安定していたと思います。
ただ、内科の処方には、安定しているからこその難しさもあります。
同じ薬を長く飲んでいる患者さんが多いからこそ、何を確認するかが大切になります。
血圧や血糖値、脂質、尿酸値などの変化。
副作用らしい症状が出ていないか。
飲み忘れが増えていないか。
生活習慣に変化がないか。
薬が増えた理由を患者さんが理解しているか。
処方が大きく変わっていなくても、確認することはあります。
特に印象に残っているのは、大病院から転院してくる患者さんです。
大病院で治療を受けていた方が、状態が安定したために地域のクリニックへ転院してくることがあります。
その場合、病状としては落ち着いていても、薬が一部変更になっていたり、同じ成分でもメーカーが変わったりすることがありました。
患者さんからすると、「前と薬が違う」「見た目が変わった」「病院が変わったことで薬も変わったのか」と不安になることがあります。
薬剤師としては、単に薬を渡すだけではなく、何が同じで何が変わったのか、患者さんが不安に感じていないかを確認する必要がありました。
風邪や感染症対応も大きな仕事だった
内科の処方というと、生活習慣病などの継続処方が中心という印象があります。
実際、私が働いていた薬局でも、継続処方の患者さんは多くいました。
一方で、内科を診療しているクリニックである以上、風邪や発熱の患者さんへの対応もあります。
夏風邪、冬の風邪、インフルエンザなど、季節によって増える疾患もありました。
さらに、私がこの薬局で働いていた時期は、新型コロナウイルス感染症への対応がまだ多かった時期でもありました。
そのため、慢性疾患の継続処方だけでなく、感染症対応も大きな業務の一つでした。
特に大変だったのは、新型コロナウイルス感染症への対応です。
感染予防のために、マスクだけでなく、必要に応じてガウンを着用して対応することもありました。
検査キットの販売もあり、使い方や注意点について質問されることもありました。
また、感染の可能性がある患者さんには、薬局内ではなく、外や車の中で待機してもらうことがありました。
その場合、薬剤師が患者さんの近くまで行き、薬の説明や受け渡しを行います。
普段の投薬であれば、薬局内で薬歴や処方内容を確認しながら対応できます。
しかし、感染症対応では、通常とは違う動きが必要でした。
感染予防に気を配りながら、薬の説明を行い、患者さんの状態も確認する。
この時期は、薬の知識だけでなく、現場で安全に対応する力も求められたと思います。
内科の処方は、安定した継続処方が多い一方で、季節性の疾患や感染症の流行によって、忙しさや対応内容が大きく変わる面もありました。
呼吸器科の処方では、吸入薬の継続確認が難しかった
呼吸器科の処方で特に印象に残っているのは、吸入薬の指導です。
呼吸器科を診療しているクリニックだったため、吸入薬を扱う機会は多くありました。
内科の処方と同じように、以前から同じ吸入薬を継続している患者さんもいました。
また、私が働いていた時期は新型コロナウイルス感染症の影響が残っていた時期でもあり、新しく吸入薬を使い始める患者さんも少なくありませんでした。
吸入薬というと、説明が難しそうに感じるかもしれません。
実際には、新規で吸入薬を説明すること自体は、慣れてしまえばそこまで難しいものではありませんでした。
最初は、吸入機器ごとの違いを覚える必要があります。
ただ、吸入薬は各メーカーの説明書や指導用資材が比較的充実しています。
薬剤師側が機器の使い方に慣れ、説明の流れをつかめば、新規の説明そのものは対応しやすいと感じました。
ご高齢の方への説明では苦労することもあります。
手の力が弱い方、息を吸う力が弱い方、説明を一度で理解するのが難しい方など、患者さんによって工夫が必要でした。
ただ、それは吸入薬に限った話ではありません。
飲み薬でも、点眼薬でも、外用薬でも、患者さんの年齢や理解度に合わせて説明する必要があります。
呼吸器科の処方で本当に難しいと感じたのは、初回の説明よりも、すでに吸入薬を使っている患者さんへの確認でした。
吸入薬を使っているのに症状があまり改善しない人。
毎日使う薬なのに、実際には毎日使えていない人。
正しく使えているつもりでも、手順が一部抜けている人。
こうした患者さんへの対応の方が、ずっと難しかったです。
症状が改善しない場合、単純に薬が効いていないのか、それとも吸入機器の使い方がうまくいっていないのかを考える必要があります。
患者さんは「毎日使っています」「ちゃんと吸えています」と言うことがあります。
しかし、実際に確認してみると、正しく毎日使えている人ばかりではありませんでした。
私の実感としては、正しく毎日使えている人は決して多くないと感じる場面もありました。
症状が良くなってきたから、自己判断で途中で使うのをやめてしまう。
発作があるときだけ使う薬だと思っていた。
吸入後の息止めができていない。
吸入前の準備が不十分。
残量の確認ができていない。
うまく吸えておらず、薬が十分に入っていない。
こうしたことは、患者さん本人に悪気があるわけではありません。
説明を受けたときは理解していても、時間が経つと手順があいまいになることがあります。
症状が落ち着くと、「もう治った」と感じて、毎日の吸入をやめてしまう方もいます。
そのため、吸入指導は初回だけきちんと説明すればよいわけではありませんでした。
「毎日使えていますか」と聞くと、多くの患者さんは「使えています」と答えます。
しかし、それだけでは本当に正しく使えているかまではわかりません。
実際には、「朝と夜のどちらで使っていますか」「吸ったあとに息を止めていますか」「残りの回数はどこで見ていますか」のように、具体的に聞く必要がありました。
呼吸器科の処方に関わる中で、吸入指導は初回説明だけで終わるものではないと感じました。
むしろ、継続している患者さんに対して、どこまで正しく使えているかを確認し続けることが大切だったと思います。
大手調剤併設ドラッグストアとは違う学びがあった
大手調剤併設ドラッグストアで働いていた頃と、内科・呼吸器科クリニックの門前薬局で働いていた頃では、求められる力が少し違っていました。
店舗にもよりますが、大手調剤併設ドラッグストアでは、特定の医療機関の処方箋が集中するというより、複数の医療機関から処方箋が少しずつ集まる店舗も多くありました。
そのため、幅広い処方に対応する力が必要でした。
一つの診療科を深く見るというより、いろいろな診療科の処方に対応する場面が多かったように思います。
また、調剤併設ドラッグストアでは、患者さんが処方箋を出したあとに、ドラッグストアで買い物をしてから戻ってくることもありました。
調剤薬局では、患者さんが薬局内で薬ができるのを待っていることが多い印象があります。
一方で、調剤併設ドラッグストアでは、患者さんが戻ってくるまでの時間を見ながら、調剤の順番やほかの業務との兼ね合いを考える場面もありました。
薬を早く用意することは大切です。
そのうえで、患者さんが買い物をしている間に、ほかの調剤や店舗業務を進めることもありました。
大手調剤併設ドラッグストアでは、処方内容を見る力だけでなく、現場全体の優先順位を考える力も求められていたと思います。
一方、内科・呼吸器科クリニックの門前薬局では、同じ医療機関に長く通っている患者さんを継続して見ることが多くなりました。
同じ薬を長く使っているからこそ、薬の効果、副作用、飲み忘れ、体調変化などを確認する必要がありました。
患者さんからも、
「この薬はずっと続けていて大丈夫なのか」
「普段何となく飲んでいるけれど、実際には何の薬なのか」
「症状が落ち着いているのに、なぜ続ける必要があるのか」
といった質問を受けることがありました。
薬をわかりやすく説明すること自体は、どの職場でも必要です。
ただ、内科・呼吸器科クリニックの門前薬局では、同じ薬を長く使っている患者さんに対して、もう一歩踏み込んで説明する場面が増えたように感じます。
また、今回働いた薬局は、大きな病院ではなく、個人のクリニック・診療所の門前薬局でした。
以前の記事でも触れましたが、私はドラッグストア勤務のあとに、半年間だけ総合病院門前の薬局で働いていたことがあります。
同じ医療機関の門前ではありますが、総合病院門前と個人クリニックの門前では、また違う部分がありました。
個人クリニックの門前薬局では、医師や医療機関との距離が近く、薬局側とクリニック側で連携を取る場面が多かったです。
たとえば、特定の薬を説明するときには必ずこの内容を伝える。
この副作用が出た患者さんがいたら、この流れで確認する。
こういう状態の患者さんがいたら、あらかじめ決められた対応をする。
そういった共有事項が、大手調剤併設ドラッグストアで働いていた頃よりも多くありました。
これは、薬局側やクリニック側の都合だけで決めているものではありません。
お互いに余計な時間をかけすぎず、必要な対応をスムーズに行い、患者さんにとって良い形にするための連携だったと思います。
医療機関との関わりが近かったため、医師と薬の勉強会を行う機会もありました。
薬局側からクリニック側に、「こうしてもらえると助かる」「この点を共有してもらえると対応しやすい」とお願いすることもありました。
調剤併設ドラッグストアから調剤薬局に移ったことで、一般用医薬品の販売や売り場でのお客さん対応など、ドラッグストアでの経験を直接活かす機会は少し減りました。
その分、処方内容や薬歴、患者さんの体調変化、薬の使い方を確認することに集中できたと思います。
どちらが良いという話ではなく、求められる力の種類が違っていました。
大手調剤併設ドラッグストアでは幅広く対応する力、内科・呼吸器科クリニックの門前薬局では継続して深く見る力が求められたように感じます。
1年の勤務でも、学びは多かった
内科・呼吸器科クリニックの門前薬局で働いた期間は約1年でした。
大手調剤併設ドラッグストアで働いていた期間と比べると、かなり短い期間です。
それでも、この1年で学んだことは少なくありませんでした。
特に感じたのは、職場が変わると、薬剤師に求められる力も変わるということです。
大手調剤併設ドラッグストアでも、患者さんの変化を確認していなかったわけではありません。
ただ、内科・呼吸器科クリニックの門前薬局では、同じ患者さんを続けて見る機会がより多くなりました。
その中で大切だったのは、毎回新しいことを見つけることだけではありません。
むしろ、「いつもと変わりがないか」を確認する場面が多かったです。
処方内容に大きな変更がない。
体調も安定している。
薬も問題なく続けられている。
そうした状態を確認することも、薬剤師の大事な仕事だと感じました。
また、医療機関との距離が近かったことも印象に残っています。
疑義照会だけでなく、日々の対応や患者さんへの説明内容について、クリニック側と共有する場面もありました。
患者さんに薬を説明するだけでなく、医師や医療機関のスタッフと連携しながら必要な対応を進めることも、この1年で学んだことの一つです。
勤務期間としては短かったですが、内科・呼吸器科クリニックの門前薬局での経験は、薬剤師としての視点を広げるきっかけになりました。
幅広い処方に対応する力だけでなく、同じ患者さんを続けて見る力。
患者さんだけでなく、医療機関と連携する力。
この2つを学べたことが、1年間の大きな収穫だったと思います。
まとめ:派手ではないけれど、意味のある1年だった
内科・呼吸器科クリニックの門前薬局での1年は、派手な経験ではありませんでした。
毎回大きな処方変更があるわけではなく、珍しい薬に頻繁に触れるわけでもありません。
同じ薬を継続している患者さんも多く、日々の業務は一見すると変化が少ないように見えることもありました。
それでも、実際に働いてみると、学ぶことは多くありました。
継続処方の中で、いつもと変わりがないかを確認すること。
感染症対応で、通常とは違う動きが必要になること。
吸入薬を、患者さんが本当に正しく使えているか確認すること。
医療機関と連携しながら、患者さんに必要な対応を進めること。
これらは、大手調剤併設ドラッグストアで働いていたときとはまた違う学びでした。
薬剤師として働いていると、職場によって求められる力が変わります。
幅広い処方に対応する力が必要な職場もあれば、同じ患者さんを継続して深く見る力が必要な職場もあります。
内科・呼吸器科クリニックの門前薬局での1年は、後者の大切さを学べた期間でした。
長い勤務期間ではありませんでしたが、患者さんを継続して見ること、変化がないことを確認すること、医療機関と連携することの意味を考えるきっかけになりました。
その後、私は皮膚科・整形外科門前の薬局で働くことになります。
そこでは、内科・呼吸器科とはまた違った処方内容や患者対応を経験することになりました。
次の記事では、皮膚科・整形外科門前で働いて感じたことについて書いていきます。
関連記事:次の記事では、「皮膚科・整形外科クリニック門前薬局で2年働いて感じたこと」について書いています。
関連記事:これまでの転職で職場選びに何を考えたかは、「薬剤師の転職で職場選びに考えたこと」でまとめています。

