大手調剤併設ドラッグストアで5年半働いて身についたこと

薬局薬剤師の働き方

前回の記事では、大手調剤併設ドラッグストアで働いて感じたことについて書きました。

今回はその続きとして、そこで約5年半働く中で、自分に何が身についたのかを整理してみます。

大手調剤併設ドラッグストアは、調剤薬局としての面と、ドラッグストアとしての面をあわせ持つ職場でした。

処方箋調剤だけをしていればよいわけではありません。
OTC医薬品、つまり処方箋なしで購入できる市販薬の相談、健康食品の相談、店舗スタッフとの連携、売り場の状況確認など、幅広い対応が求められました。

忙しさはありましたが、振り返ると、薬剤師としての土台を作り直すうえで大きな意味があった期間でした。

調剤の基礎を学び直せた

総合病院門前の薬局で働いていたときは、毎日がかなり忙しく、1枚1枚の処方箋にじっくり向き合う余裕はあまりありませんでした。

そこで学べたこともありましたが、当時の自分にとっては、調剤の流れを一つひとつ整理しながら身につけるというより、目の前の業務についていくことで精一杯だったように思います。

その後、大手調剤併設ドラッグストアに入社しました。

最初に配属された店舗は、会社側が配慮してくれたのかもしれませんが、調剤の忙しさに常に追われるような店舗ではありませんでした。

そのため、1枚の処方箋に対して、内容を確認しながら時間をかけて取り組むことができました。

処方内容を見る。
薬歴を確認する。
用法用量に問題がないか考える。
患者さんにどのように説明するかを考える。

こうした基本的な流れを、落ち着いて確認できたことは大きかったです。

入社時には、店舗に配属される前に1週間程度の泊まりがけの研修がありました。
さらに、配属後もしばらくは、先輩に教わりながら実際の店舗業務を覚えていく期間もありました。

総合病院門前では、現場に出ながら覚える部分が多く、基礎を整理する余裕が少なかったです。
大手調剤併設ドラッグストアでは、研修と現場での実践を通して、調剤の基礎を学び直すことができました。

この時期に調剤の土台を作り直せたことは、その後の薬剤師人生にも影響していると感じています。

忙しい現場で経験を積むことも大事です。
ただ、自分の場合は、一度落ち着いた環境で基礎を確認できたことで、処方箋を見るときの考え方や、服薬指導に入る前の準備の仕方を整理できました。

この経験があったからこそ、その後に忙しい店舗や別の門前薬局で働くときにも、完全に流されるだけではなく、ある程度自分の中で考えながら動けるようになったのだと思います。

市販薬・接客対応の経験が調剤にも活きた

新卒で働いていたドラッグストアでは、市販薬だけでなく、健康食品やサプリメントについて相談を受けることも多くありました。

そのため、大手調剤併設ドラッグストアで調剤業務をするようになってからも、患者さんから市販薬や健康食品について聞かれたときに、内容をすぐに理解できる場面が多かったです。

たとえば、処方薬を渡すときに、

「この薬と市販の風邪薬を一緒に飲んでもいいですか」
「この健康食品は続けても大丈夫ですか」
「家にある薬を使ってもいいですか」

といった話が出ることがあります。

調剤薬局では、基本的には処方薬の説明が中心です。
しかし、患者さんの生活の中では、処方薬だけでなく、市販薬や健康食品を使っていることも少なくありません。

そのような場面で、ドラッグストア時代に市販薬を中心に経験していたことはかなり役立ちました。

接客対応の面でも、ドラッグストアでの経験は活きたと感じています。

調剤薬局での投薬は、基本的にカウンターを挟んで行うため、ドラッグストアの売り場での接客とは少し違います。

それでも、相手との距離感、立ち位置、相槌の打ち方、話を遮らずに聞く姿勢などは、ドラッグストア時代に身についた部分が大きかったです。

ドラッグストアでは、お客さんの方から相談してくることもあれば、棚の前で悩んでいるお客さんにこちらから声をかけることもありました。

自分から話しかけてくるお客さんには、まず話をしっかり聞くことが必要でした。

棚の前で迷っているお客さんに声をかける場合は、限られた会話の中で、症状や困っていること、使っている薬など、必要な情報を聞き出す力が求められました。

この経験は、調剤薬局での服薬指導にもつながっていたと感じます。

患者さんが最初からすべて話してくれるとは限りません。
こちらから聞き方を工夫することで、市販薬の使用、健康食品の併用、薬への不安、飲み忘れなどが見えてくることもあります。

また、ドラッグストアでは、薬を使う本人ではなく、家族などが買いに来ることもよくありました。

調剤薬局でも、本人以外の家族が薬を受け取りに来ることはあります。
ただ、自分の感覚としては、ドラッグストアの方が本人以外から相談を受ける場面は多かったように思います。

市販薬を選ぶときには、誰が使うのか、いつから症状があるのか、どのように使いたいのか、年齢、併用薬、健康食品の使用、副作用歴、アレルギー歴などをできるだけ確認していました。

本人以外が買いに来ている場合、必要な情報がすべて分からないこともあります。

その場合、分かっている情報だけで紹介できる薬があるのか。
本人に確認してもらった方がよいのか。
症状や背景によっては、市販薬で対応せず受診を勧めた方がよいのか。

こうした判断を、ドラッグストア時代に繰り返し経験しました。

調剤薬局でも、患者さん本人ではなく家族が薬を受け取りに来ることがあります。
そのときも、薬の使い方を説明するだけでなく、本人の状況をどこまで確認できるか、分からない情報がある場合にどう対応するかを考える必要があります。

ドラッグストア時代にこうした確認をきっちり行っていたことで、調剤薬局でも大きく戸惑うことはありませんでした。

新卒で入ったドラッグストアでの経験は、当時は調剤薬局でどう活きるのか分からない部分もありました。

あとから振り返ると、市販薬や接客対応で身につけた聞き取り方、確認の仕方、説明の仕方は、調剤業務でもかなり役立っていたと思います。

相手に合わせて説明する力が身についた

ドラッグストアで働いていたときに強く感じたのは、薬剤師には正しい知識を持っていることだけでなく、それを相手にわかる言葉で伝える力が必要だということでした。

市販薬や健康食品について相談を受ける場面では、専門用語をそのまま使っても、お客さんには伝わりません。

症状を聞き取り、生活状況や使いやすさも考えながら、その人に合いそうな選択肢を探す。
そして、なぜそれが合うのか、どのように使えばよいのかを、できるだけわかりやすく説明する。

この積み重ねは、調剤薬局での服薬指導にもつながりました。

処方薬の説明でも、ただ薬効や用法を伝えるだけでは不十分です。

患者さんによって、知りたいことも、不安に思っていることも違います。

短く要点だけ知りたい人もいれば、副作用や飲み合わせを詳しく確認したい人もいます。
薬そのものより、「本当に飲んで大丈夫なのか」という不安が強い人もいます。

そうした相手に対して、同じ説明をそのまま繰り返すのではなく、説明の量や言葉を変える力が少しずつ身につきました。

また、調剤併設ドラッグストアでは、調剤をしている途中で市販薬の相談対応が必要になることもありました。

基本的には調剤が優先です。
とはいえ、人がいないときには、市販薬の相談をまったく対応しないわけにもいきません。

すぐに対応できない場合には、相談を待っている方に対して、

「順番にご案内します」

と一言声をかけることもありました。

何も言わずに待たせるのではなく、今すぐ対応できない状況であっても、相手に状況を伝える。
こうした対応も、現場では必要でした。

説明力というと、薬の説明だけを思い浮かべるかもしれません。

しかし実際には、患者さんやお客さんに対して、今の状況をわかりやすく伝えることも含まれます。

相手に合わせて伝える力。
その場の状況に応じて対応する力。

この2つは、大手調剤併設ドラッグストアで鍛えられた部分です。

忙しい現場で優先順位を考える力がついた

大手調剤併設ドラッグストアでは、調剤業務だけに集中していればよいわけではありませんでした。

薬局内では処方箋を待っている患者さんがいる。
売り場では市販薬の相談を待っているお客さんがいる。
電話が鳴る。
在庫確認が必要になる。
店舗スタッフから確認を求められる。

そういう場面が普通にありました。

基本的には調剤が優先です。

処方箋を受け付けている以上、患者さんを長く待たせるわけにはいきません。

ただ、市販薬の相談も薬剤師でなければ対応しにくい内容があります。

人が足りないときには、調剤と市販薬の相談対応のどちらを先に進めるべきか、その都度判断する必要がありました。

すぐに相談対応に入れる場合もあれば、調剤を優先しなければならない場合もあります。
反対に、調剤の手を一度止めてでも、売り場の相談に対応した方がよい場面もあります。

その判断は単純ではありませんでした。

患者さんをどのくらい待たせているのか。
今の処方内容は急いで進める必要があるのか。
市販薬の相談内容はどの程度急ぎなのか。
他に対応できるスタッフはいるのか。
自分が今すぐ動くべきなのか。

こうしたことを考えながら動く必要がありました。

忙しい現場では、目の前の仕事だけを見ていると、全体の流れが止まってしまうことがあります。

今すぐやるべきことと、少し後でもよいことを判断する力が必要でした。

この経験を通して、優先順位を考える力はかなり鍛えられたと感じています。

調剤薬局でも、忙しい時間帯には同じような判断が求められます。

監査、投薬、電話対応、疑義照会、薬歴、在庫確認など、同時に複数の仕事が重なることは珍しくありません。

そのときに、どれから手をつけるべきかを考える力は、大手調剤併設ドラッグストアで働く中で身についたものだと思います。

人との関わり方と現場を見る意識が身についた

調剤薬局では、基本的に薬剤師と医療事務が中心です。

ドラッグストアでは、薬剤師だけでなく、登録販売者、店舗運営スタッフ、パート、アルバイトなど、さまざまな立場の人と一緒に働くことになります。

大手調剤併設ドラッグストアでは、調剤薬局の部分とドラッグストアの部分が完全に別々というより、店舗全体として一体になって動いている感覚がありました。

調剤室の中だけを見ていればよいわけではありません。

売り場の状況、レジの混み具合、市販薬の相談の有無、スタッフの動きなども、ある程度見ておく必要がありました。

また、自分は正社員として入社していたため、入社して日が浅い時期でも、パートやアルバイトの方に仕事をお願いしなければならない場面がありました。

基本的には年上の方が多かったため、言葉遣いやお願いするタイミングにはかなり気を使いました。

相手が今どの仕事をしているのか。
急ぎの作業をしているのか。
手を止めてもらってもよい状況なのか。
自分で対応した方が早いのか。
別の人にお願いした方がよいのか。

こうしたことを考えずに頼んでしまうと、かえって現場が回りにくくなることもあります。

この経験を通して、自分の仕事だけを見ていては駄目だと感じるようになりました。

調剤室が忙しいと、どうしても「こちらが一番大変だ」と思ってしまいがちです。

しかし、売り場には売り場の忙しさがあり、レジにはレジの忙しさがあり、登録販売者やパート・アルバイトの方にもそれぞれ抱えている仕事があります。

何かをお願いするときには、相手の状況を見たうえで、できるだけ伝わりやすく、受け取りやすい形で頼む必要がありました。

これは、薬の知識とは別の意味で、現場で働くうえで大事な力だったと思います。

一緒に働く職員にもさまざまな人がいて、調剤やドラッグストアに来る患者さん・お客さんにもさまざまな人がいました。

その中で働くことで、人との関わり方についても経験を積むことができました。

たとえば、職場では、こちらがお願いしたい仕事でも、相手にとってはあまり気が進まない作業であることもあります。

そのようなときに、ただ「やってください」と伝えるだけでは、うまくいかないことがあります。

なぜその作業が必要なのか。
どの程度急ぎなのか。
今お願いしても大丈夫な状況なのか。
どのように伝えれば相手が受け取りやすいのか。

そうしたことを考えながら頼む経験は、現場で働く中で少しずつ身についていきました。

この経験は、患者さんへの説明にもつながっていたと感じています。

薬を飲むことに抵抗がある人や、毎日の血圧測定を面倒に感じている人に対して、ただ「飲んでください」「測ってください」と伝えるだけでは、なかなか行動にはつながりません。

なぜ薬が必要なのか。
なぜ血圧を測る意味があるのか。
その人にとって、どの方法なら続けやすいのか。

そうしたことを考えながら伝える必要があります。

職場での人との関わり方と、患者さんへの説明は、まったく別のもののようでいて、共通する部分もありました。

相手の状況を見て、言葉を選び、納得して動いてもらえるように伝える。
この点では、どちらも同じだったと思います。

薬剤師というと、どうしても薬の知識や調剤技術に目が向きがちです。

もちろん、それは大事です。

それでも実際の現場では、自分一人で仕事が完結するわけではありません。

事務、登録販売者、店舗スタッフ、パート、アルバイトなど、いろいろな人の動きがあって、ようやく店舗全体が回っています。

大手調剤併設ドラッグストアで働いたことで、薬剤師として自分の仕事をこなすだけでなく、周囲の状況を見ながら動く意識が身につきました。

大手調剤併設ドラッグストアでの経験は、その後にも活きている

大手調剤併設ドラッグストアでの約5年半は、決して楽な期間ではありませんでした。

調剤だけでなく、市販薬の相談、接客、店舗スタッフとの連携など、求められることは多かったです。

忙しい時間帯には、調剤室の中だけでなく、売り場や店舗全体の状況も見ながら動く必要がありました。

振り返ると、その環境だったからこそ身についたことも多かったと感じています。

調剤の基礎を学び直せたこと。
市販薬や接客対応の経験を調剤業務に活かせたこと。
相手に合わせて説明する力が身についたこと。
忙しい現場で優先順位を考える力がついたこと。
職種や立場の違う人と関わりながら、現場全体を見る意識が身についたこと。

これらは、その後の薬局勤務でも役に立っています。

大手調剤併設ドラッグストアは、人によって合う・合わないがある職場だと思います。

調剤だけをじっくり深めたい人にとっては、店舗業務や市販薬の相談対応が負担に感じることもあるかもしれません。

その反面、調剤、市販薬、接客、店舗運営に近い動きまで幅広く経験したい人にとっては、多くのことを学べる環境でもあります。

自分にとっては、薬剤師としての土台を作り直し、現場で働く力を身につける期間でした。

今振り返ると、大手調剤併設ドラッグストアで働いた5年半は、その後の薬剤師人生につながる大事な経験だったと思います。

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