私は新卒で大手ドラッグストアに入社し、約3年間勤務しました。
会社としては調剤併設店舗もありましたが、私自身が当時配属されていたのは、調剤業務のない店舗でした。
そのため、最初のドラッグストア勤務では、処方箋を受けて調剤する仕事ではなく、OTC医薬品の相談対応、品出し、レジ、発注、売り場づくりなどが主な業務でした。
その後、調剤薬局へ転職し、半年ほど勤務することになります。
今回は、調剤業務のないドラッグストアから調剤薬局へ転職して、実際に感じた違いについて書いていきます。
ドラッグストアと調剤薬局のどちらが良い・悪いという話ではありません。
あくまで、私自身が働いてみて感じたことです。
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ドラッグストアについて
ドラッグストアで実際にしていた仕事
ドラッグストアでの主な仕事は、品出し、発注、レジ、商品案内、市販薬の相談対応などでした。
入社前は、薬剤師として働く以上、薬に関わる仕事が中心になると思っていました。
しかし実際には、品出しやレジ、商品の場所案内、発注など、店舗を回すための仕事がかなり多くありました。
特にチラシや広告が入る日は、お客さんの数が増えます。
レジも混みますし、品出しも増えます。商品の場所を聞かれることも多くなり、市販薬の相談対応も自然と増えます。
つまり、ドラッグストアでの忙しさは、薬の相談だけでなく、店舗全体の動きに大きく左右されるものでした。
また、季節によって売り場づくりも変わります。
風邪薬、花粉症の薬、日焼け止め、虫よけ、栄養ドリンクなど、季節ごとに目立たせる商品が変わります。新商品が入れば売り場に並べ、売れない商品は下げることもあります。
薬以外にも、日用品、食品、化粧品、健康食品など、思っていた以上に幅広い商品を扱っていました。
市販薬の相談についても、大学で学んだような専門的な説明をそのままする場面はほとんどありませんでした。
お客さんに難しい言葉や専門用語を使っても、伝わりにくいからです。
実際には、
「この症状なら、こちらの薬が合いやすいです」
「眠気が出にくいものなら、こちらの方が使いやすいです」
「熱や痛みがつらいなら、こちらを選ぶことが多いです」
というように、できるだけ分かりやすく、短く説明することが多かったです。
もちろん、薬剤師としての知識がまったく不要だったわけではありません。
ただ、大学で学んだ薬学的な知識を深く使う場面は、思っていたよりも少なかったです。
そのため、働いている途中で、
「自分は薬学部で学んだ意味があったのだろうか」
と考えたこともありました。
今振り返ると、ドラッグストアでは薬の専門知識だけでなく、接客、売り場づくり、商品管理、店舗全体を見る力が求められていたのだと思います。
ただ、当時の自分にとっては、薬剤師として働いている実感を持ちにくい時期もありました。
ドラッグストアは店舗によって忙しさが違う
ドラッグストアで働いて感じたことの一つに、同じ会社でも店舗によって忙しさがかなり違う、というものがあります。
私は社内異動で複数の店舗を経験しましたが、店舗ごとに仕事の流れは思っていた以上に違いました。
比較的落ち着いている店舗では、品出しや発注を終えても、そもそも来店されるお客さんが少ないため、自由に使える時間がある程度ありました。
一方で、大きい店舗やお客さんの多い店舗では、レジ、品出し、商品案内、売り場対応などに追われることが多く、時間に余裕がない日もありました。
ただし、店舗の規模だけで忙しさが決まるわけでもありません。
大きい店舗でも人員がそろっていれば回りやすいことがありますし、小さい店舗でも人が少なければ忙しく感じることがあります。
そのため、ドラッグストアの働き方は、会社だけでなく、配属される店舗や人員体制によってかなり変わると感じました。
ドラッグストアで身についたこと
ドラッグストアで身についたことは、接客、分かりやすく説明する力、売り場を見る力、商品知識、相手に合わせて話す力だったと思います。
ドラッグストアでは、とにかく人と会話する場面が多くありました。
時間帯によっては、医薬品登録販売者や薬剤師などの資格者が自分一人だけということもありました。
そのため、お客さんから薬について聞かれた時には、自分が対応するしかありません。
最初の頃は、市販薬の説明をしていても、お客さんの反応があまりよく分からないことがありました。
自分では説明しているつもりでも、相手に伝わっているのか分からない。
詳しく話しているつもりでも、相手の反応が薄い。
そんなことも多かったです。
ただ、接客の数をこなしていくうちに、少しずつ相手の反応が見えるようになってきました。
どんな質問をすると症状や困っていることを聞き出しやすいのか。
どこまで説明すると伝わりやすく、どこから先は話しすぎになるのか。
そういった感覚は、現場でお客さんと話す中で少しずつ身についていったと思います。
また、売り場に立つ時間が長かったので、どの商品がよく売れているのか、お客さんがどの売り場で立ち止まりやすいのかも少しずつ分かるようになっていきました。
市販薬は、医療用医薬品と違って、新商品が出るペースも早いです。
新しい商品が入れば、どんな成分なのか、既存の商品と何が違うのか、どんな人に案内しやすいのかを知る必要があります。
嫌でも新しい商品に触れる機会が多かったので、市販薬や日用品に関する知識は自然と増えていきました。
ドラッグストアでの経験は、薬学的な知識を深く使う場面ばかりではありませんでした。
ただ、人に分かりやすく説明する力や、相手の反応を見ながら話す力は、後に調剤薬局で働く時にも役に立ったと思います。
転職前に思っていた調剤薬局のイメージ
調剤薬局で働く前、私は調剤薬局に対して、正直なところ少し単調な仕事というイメージを持っていました。
薬局の中で処方箋を受け取り、薬を準備して、間違いがないか確認して、患者さんに説明して渡す。
もちろん大切な仕事であることは分かっていました。
ただ、外から見ていると、毎日同じような作業を繰り返しているようにも見えていました。
ドラッグストアでは、医薬品以外にも日用品、食品、化粧品、健康食品など、かなり幅広い商品を扱います。
売り場対応、レジ、発注、品出し、商品案内など、日によってやることも多く、店舗全体を見ながら動く必要がありました。
そのため、調剤薬局に転職する前は、
「調剤薬局は、ドラッグストアに比べると仕事の幅が狭いのではないか」
と思っていました。
しかし実際に働いてみると、その印象は変わりました。
調剤薬局について
調剤薬局に入って最初に感じたこと
調剤薬局に入った時、私は調剤業務の経験がほとんどない状態でした。
そのため、最初の頃は、処方箋に書かれた薬を取りそろえる業務と、比較的シンプルな処方の患者さんへの投薬が中心でした。
大学を卒業してからすでに4年ほど経っていたこともあり、正直なところ、成分名や薬理、作用機序などはかなり忘れていました。
調剤薬局に入った時は、
「この状態で本当に調剤薬局で働けるのだろうか」
と焦ったことを覚えています。
ただ、実際に患者さんへ説明する場面では、細かな薬理や作用機序を詳しく話すことは、思っていたほど多くありませんでした。
基本的には、薬剤情報提供書に書かれている内容をもとに、
「何の薬か」
「いつ飲むのか」
「注意することは何か」
「前回と変わったところはあるか」
といったことを、分かりやすく説明することが多かったです。
その点では、最初に想像していたよりも話しやすい部分はありました。
ただし、患者さんから深く質問された時には、すぐに答えられず焦ることもありました。
自分の中で知識があいまいな部分があると、患者さんの前でそれがそのまま出てしまいます。
そのため、調剤薬局で働く中で、改めて薬の知識を勉強し直す必要性を感じました。
薬を渡す前に考えることが多かった
調剤薬局で働いてみて大きく印象が変わったのは、薬剤師の仕事は「薬をそろえて渡すだけ」ではないということです。
転職前は、処方箋を受け取り、薬を準備し、患者さんに少し説明して渡す仕事だと思っていました。
しかし実際には、薬を渡す前の段階で考えることがかなり多くありました。
この処方箋の内容は本当に正しいのか。
この患者さんに、この薬をこの量で渡してよいのか。
前回と比べて変更点はあるのか。
併用薬や副作用歴、残薬、服薬状況に問題はないか。
そういったことを確認する必要があります。
医師の処方は基本的に正しいものだと思っていましたが、実際の現場では確認が必要なこともあります。
入力ミス、用量の計算間違い、処方箋の日付間違い、押印漏れなど、さまざまな確認事項がありました。
医師の処方を疑うという意味ではありません。
ただ、患者さんに薬を渡す前に、薬剤師として確認すべきことがあるのだと実感しました。
また、ドラッグストアでの相談対応は、どちらかというと一期一会に近い場面が多かったです。
その時の症状を聞いて、今使いやすい市販薬を案内する。
その場での判断はもちろん大切ですが、継続的に同じ人を追っていく感覚はそこまで強くありませんでした。
一方で調剤薬局では、継続して来局される患者さんも多くいます。
そのため、過去にどの薬が出ていたのか、前回どんな話をしたのか、副作用の訴えはなかったか、飲み忘れはなかったか、といった振り返りが重要になります。
この点は、調剤薬局に入る前にはほとんど考えていなかった部分でした。
薬を渡すその場だけでなく、前回までの経過を見て、今回の処方内容とつなげて考える。
ここに、調剤薬局の仕事の難しさと面白さがあるのだと感じました。
調剤薬局の忙しさは処方箋枚数だけでは決まらない
調剤薬局で働いてみて感じたのは、忙しさは処方箋の枚数だけでは決まらないということです。
もちろん、処方箋枚数が多ければ基本的には忙しくなります。
ただ、それだけで単純に判断できるものではありませんでした。
薬局の立地、門前の病院が開いている曜日や時間、その日の診療科目によっても忙しさは変わります。
また、処方される薬の内容によっても負担は大きく違います。
たとえば、一包化が多い病院の門前では、処方箋の枚数がそこまで多くなくても、調剤にかかる時間はかなり増えます。
来局された患者さんへの対応だけでなく、電話で質問を受けることもあります。
その対応が重なると、薬をそろえる作業や薬歴の入力が思うように進まないこともありました。
さらに、薬局は人数が少ない職場も多いです。
そのため、1人でも休みが出たり、想定より来局が重なったりすると、それだけで一気に忙しくなります。
調剤薬局の忙しさは、単に「処方箋が何枚来たか」だけではありません。
処方内容、患者さんへの対応、薬局の人数、病院の診療状況など、いろいろな要素が重なって決まるのだと感じました。
調剤薬局で新しく求められたこと
調剤薬局に来てから新しく求められたことも多くありました。
処方箋の見方、疑義照会、薬歴、継続して来局される患者さんの確認、制度や点数への理解などです。
大学の授業や学生実習で、調剤薬局の仕事については一通り学んでいたつもりでした。
しかし、実際に職場で働く段階になると、見落としていることが本当に多いと感じました。
まず、薬の名前が分かりませんでした。
成分名はある程度分かっているつもりでも、当時は今ほど一般名処方が多くなかったため、処方箋には医薬品の商品名、つまり先発品名で書かれていることが多くありました。
そのため、商品名を見ても、それが何の成分なのかすぐに分からないことが多かったです。
まずは、成分名と商品名を結びつけて覚える必要がありました。
さらに、それを覚えたとしても、今度はその薬が薬局内のどこの棚にあるのかを覚えなければいけません。
そして何より難しかったのは、処方箋の内容が正しいのかどうかを判断することでした。
経験がない状態では、処方箋を見ても、どこに注意すればいいのか分かりません。
用量は正しいのか。
日数はおかしくないのか。
前回から変更された薬はあるのか。
併用薬との問題はないのか。
患者さんに確認すべきことは何なのか。
最初は、先輩薬剤師の動きを見ながら、見よう見まねで何とか形だけを覚えていくような状態でした。
制度や点数についても、本来は調剤薬局で働くうえで大切な部分です。
ただ、正直なところ、最初の頃はそこまで気にする余裕はありませんでした。
まずは薬を間違えずにそろえること。
処方箋の内容を理解すること。
患者さんに必要なことを説明すること。
薬歴を書くこと。
目の前の業務をこなすだけで精一杯でした。
調剤薬局に来て感じたのは、薬剤師の仕事は、大学で学んだ知識をそのまま使えばできるものではないということです。
もちろん、基礎知識は必要です。
ただ、それを実際の処方箋や患者さんの状況に結びつけて考えるには、現場での経験が必要でした。
調剤薬局に来てよかったこと
調剤薬局に来てよかったと感じることもありました。
やはり、薬学部を卒業して薬剤師になった以上、病院で処方される薬に関わる仕事をすることで、薬剤師として働いている実感は持ちやすくなりました。
ドラッグストアでの経験がまったく活きなかったわけではありません。
市販薬の相談対応や接客、分かりやすく説明する力は、調剤薬局でも役に立ちました。
ただ、調剤薬局では、処方薬を通して、より薬学的な知識を使う場面が増えたと感じました。
処方内容を見て、前回から変わった薬を確認する。
用量や日数に違和感がないかを見る。
患者さんの話を聞いて、副作用や飲み忘れがないか確認する。
必要があれば疑義照会につなげる。
こうした場面では、大学で学んだことや、薬剤師として勉強してきたことが、ドラッグストア時代よりも使いやすいと感じました。
もちろん、最初から十分にできたわけではありません。
むしろ、分からないことの方が多く、焦ることも多かったです。
それでも、調剤薬局で働く中で、
「薬剤師として、もう一度ちゃんと薬を勉強しないといけない」
と思うようになりました。
その意味では、調剤薬局への転職は、自分にとって薬剤師としての仕事を見直すきっかけになったと思います。
どちらが良い・悪いではなく、向き不向きがある
ドラッグストアと調剤薬局のどちらが良いかは、人によって違うと思います。
ドラッグストアでは、市販薬だけでなく、健康食品、化粧品、日用品、食品など、かなり幅広い商品を扱います。
そのため、薬だけでなく、健康全般の商品や小売業、店舗運営に興味がある人には合いやすいと思います。
実際、売り場づくりや発注、商品の入れ替え、接客など、薬剤師という枠に限られない仕事も多くあります。
ただし、薬剤師として働いている実感を強く持ちたい人にとっては、物足りなさを感じる場面もあるかもしれません。
私自身も、ドラッグストアで働いていた頃は、
「薬学部で6年間学んで国家試験に合格したけれど、自分は薬剤師として働けているのだろうか」
と考えることがありました。
もちろん、ドラッグストアでの仕事にも意味はあります。
市販薬の相談対応や、一般の方に分かりやすく説明する力は、薬剤師として大切な力です。
ただ、業務全体で見ると、薬剤師でなければできない仕事の割合は、調剤薬局に比べると少なく感じました。
一方で、調剤薬局は、多くの人が想像しやすい「薬剤師らしい仕事」に近いと思います。
処方箋を受け取り、薬をそろえ、内容を確認し、患者さんに説明する。
薬歴を見て過去の経過を確認し、必要があれば疑義照会を行う。
薬にしっかり関わる仕事がしたい人にとっては、調剤薬局の方が薬剤師としての実感を持ちやすいと思います。
ただし、調剤薬局にも注意点はあります。
特定の診療科の門前薬局では、扱う薬や患者さんの層が偏ることもあります。
総合病院の門前であれば、幅広い処方に触れやすいかもしれません。
しかし、特定の診療科に偏った薬局では、自分で意識して勉強しないと、知識が偏ってしまうこともあると思います。
また、調剤薬局では、患者さんだけでなく、病院や医師、看護師、ケアマネジャーなど、他の医療職との関わりも出てきます。
ドラッグストアでのお客さん対応とは、また違った立ち回り方が必要になります。
その意味では、ドラッグストアにも調剤薬局にも、それぞれ向き不向きがあります。
薬以外も含めて幅広く関わりたいなら、ドラッグストアは合いやすいと思います。
薬により深く関わりたいなら、調剤薬局は合いやすいと思います。
どちらが上という話ではなく、求められる力が違うということだと思います。
これから転職を考える薬剤師へ
私が転職した理由はいろいろあります。
当時の自分なりに悩んだこともありますし、実際に職場を変えてみて分かったこともあります。
その経験から言うと、転職を考える時には、まず自分が何を優先したいのかを考えた方がいいと思います。
今の職場がしんどい。
給料が安い。
もっと勉強できる環境に行きたい。
薬剤師としての実感を持てる仕事がしたい。
人間関係を変えたい。
転職を考える理由は人それぞれです。
ただ、今すぐ辞めなければいけないような状況でなければ、焦って決める必要はないと思います。
自分は何がしたいのか。
何を大事にしたいのか。
給料なのか、休みなのか、勉強できる環境なのか、人間関係なのか、働き方なのか。
そこを整理してから動いた方が、転職後の後悔は少なくなると思います。
幸い、薬剤師は国家資格です。
資格があるから何でもうまくいく、というわけではありません。
ただ、働き方を選び直す余地は比較的ある職種だと思います。
だからこそ、転職するかどうかだけでなく、
「自分はどんな薬剤師として働きたいのか」
を一度考えてみることが大切だと思います。
ドラッグストアにも、調剤薬局にも、それぞれ良さと大変さがあります。
私の場合は、調剤薬局に転職したことで、薬剤師として薬に向き合う時間は増えました。
一方で、ドラッグストアで身につけた接客や分かりやすく説明する力も、決して無駄ではありませんでした。
どちらの経験も、今の自分につながっていると思います。
これから転職を考えている薬剤師の方には、周りの意見だけで決めるのではなく、自分が何を大切にしたいのかを考えたうえで、働く場所を選んでほしいです。
ドラッグストアから調剤薬局へ移る場合、求人票だけでは分かりにくい部分もあります。
調剤経験の有無、教育体制、処方箋枚数、扱う診療科、薬剤師の人数などは、実際に働き始めてからギャップになりやすい部分です。
正社員として薬剤師転職を具体的に考えている場合は、自分で求人を探すだけでなく、薬剤師向けの転職支援サービスを使って条件を確認する方法もあります。
ただし、転職支援サービスは、転職意思がある人が条件を整理したり、求人の詳細を確認したりするためのものです。求人だけを見たい、今の転職市場感だけ知りたい、という目的では合わない場合があります。
利用する場合は、対象条件や公式サイトの内容を確認したうえで、自分の希望する働き方に合うかを見てから判断するのがよいと思います。
薬剤師転職サポート【アポプラス薬剤師】関連記事:次の記事では、「大手調剤併設ドラッグストアで働いて感じたこと」について書いています。
関連記事:その後の転職で職場選びに何を考えたかは、「薬剤師の転職で職場選びに考えたこと」でまとめています。

