メーカー問い合わせは薬剤師の大事な確認手段|添付文書で分からないときの調べ方

薬局実務

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薬剤師として働いていると、患者さんから薬について細かい質問を受けることがあります。

「開封後はいつまで使えますか」
「冷蔵庫から出してしまったけど大丈夫ですか」
「旅行に持って行くときはどう保管すればいいですか」
「この容器はどう捨てればいいですか」
「シートから出してしまった薬は、まだ使えますか」

このような質問は、患者さんにとっては現実的で大切な内容です。

しかし、薬剤師がすべての薬の細かい使い方や保管方法を暗記しているわけではありません。

大切なのは、分からないことをそのままにせず、必要な資料を確認し、それでも分からない場合にはメーカーへ確認することです。

メーカー問い合わせは、薬剤師が分からないことを丸投げするためのものではありません。

添付文書、インタビューフォーム、指導せん、メーカー資料などを確認したうえで、不足する情報を補うための確認手段です。

この記事では、薬局でメーカーに問い合わせる場面、問い合わせ前に整理しておきたいこと、回答を患者さんへ説明するときの注意点についてまとめます。

薬剤師がメーカーへ問い合わせるのはどんなときか

薬局でメーカーへ問い合わせるのは、薬そのものの情報や、製剤に関する細かい内容を確認したいときです。

たとえば、保管方法、開封後の扱い、使用後の廃棄方法、容器やデバイスの扱い、軟膏やクリームの混合可否、シートから外した錠剤の扱いなどです。

患者さんからの質問は、添付文書の項目名どおりに来るわけではありません。

患者さんは「安定性データはありますか」とは聞かず、「シートから出してしまった薬は、まだ飲んでもいいですか」と聞きます。

「貯法はどうなっていますか」ではなく、「車の中に置いてしまったけど大丈夫ですか」と聞きます。

薬剤師は、その生活上の質問を、保管方法、安定性、開封後の扱い、製剤上の注意点などに置き換えて確認する必要があります。

まず確認するのは添付文書やメーカー資料

メーカーへ問い合わせる前に、まず確認したいのは添付文書です。

添付文書には、効能又は効果、用法及び用量、禁忌、重要な基本的注意、副作用、相互作用、適用上の注意、貯法など、薬を扱ううえで基本となる情報が記載されています。

ただし、添付文書だけですべての実務上の疑問が解決するとは限りません。

その場合は、インタビューフォーム、患者向け指導せん、メーカー公式サイトの資材なども確認します。

インタビューフォームには、添付文書より詳しい製剤情報や安定性に関する情報が載っていることがあります。

吸入薬、点鼻薬、点眼薬、自己注射製剤、外用薬などでは、患者向けの指導せんが用意されていることも多いです。基本的な使い方を説明するうえでは非常に役立ちます。

一方で、指導せんにすべての細かい内容が載っているわけではありません。

開封後の具体的な期限、使用後の廃棄方法、容器や部品の扱い、特殊な保管状況での可否などは、患者さんから聞かれやすい内容ですが、指導せんだけでは確認できないことがあります。

そのようなときに、メーカー資料を確認したり、必要に応じてメーカーへ問い合わせたりします。

添付文書の確認ポイントについては、こちらの記事でもまとめています。

関連記事:添付文書はどこを見る?調剤薬局でまず確認したいポイント

資料を見ても分からなければ、問い合わせてよい

添付文書、インタビューフォーム、指導せん、メーカー資料を見ても理解できない場合は、その時点でメーカーへ問い合わせてもよいと思います。

もちろん、添付文書を見ればすぐ分かる基本的な内容を、最初からメーカーへ丸投げするのは適切ではありません。

しかし、資料を見ても読み取れない場合や、患者さんへ具体的に説明するための情報が不足している場合は、メーカーへ確認することも薬剤師の仕事です。

薬物動態や細かな相互作用など、普段確認している資料には見当たらなくても、メーカー側に追加の資料や情報がある場合もあります。

丁寧に問い合わせれば、メーカー側で分かる範囲の情報は教えてもらえることがあります。

大切なのは、「この薬について教えてください」と漠然と聞くのではなく、「この資料のここまでは確認したが、この点が分からない」と整理して問い合わせることです。

メーカーへ問い合わせる前に整理しておくこと

メーカー問い合わせも、疑義照会と同じで、事前の整理が大切です。

問い合わせる前には、薬品名、剤形、規格、確認したい内容、確認済みの資料、患者さんに説明したい内容、急ぎかどうかを整理しておくとよいです。

たとえば、軟膏やクリームの混合可否を確認したい場合、薬品名だけでは足りないことがあります。

混合する薬剤、混合比、保存容器、保存条件、使用予定期間などによって、確認すべき内容が変わることがあります。

シートから外した錠剤について確認したい場合も、裸の状態で保管するのか、分包するのか、遮光や湿気の条件はどうか、どのくらいの期間を想定しているのかによって、話が変わることがあります。

条件があいまいなまま問い合わせると、回答も一般的な内容にとどまりやすくなります。

問い合わせるときは、次のように聞くと内容が伝わりやすくなります。

「〇〇錠について、PTPシートから外した状態で保管した場合の安定性データがあるか確認したいです」

「添付文書とインタビューフォームは確認しましたが、開封後の使用期限について明確な記載が見つけられませんでした」

「患者さんへ保管方法を説明したいため、メーカー資料上で案内できる範囲を確認したいです」

「〇〇軟膏と△△クリームを混合した場合の安定性や配合変化について、確認できるデータがあるか知りたいです」

このように、何を確認したいのか、どの資料まで見たのか、患者さんへ何を説明したいのかを伝えると、必要な情報にたどり着きやすくなります。

メーカーに問い合わせても、答えが出ないこともある

メーカーへ問い合わせれば、必ず明確な答えが返ってくるわけではありません。

特に、患者さんの個別の状況が強く関わる質問では、データがないことも多いです。

たとえば、開封後の薬をどのくらい保管できるか、シートから外した錠剤をどの程度置いてよいか、特定の条件で保管してしまった薬を使えるか、といった内容です。

患者さんからすると、「何日までなら大丈夫ですか」と具体的な数字を知りたい場合があります。

しかし、資料上もメーカー回答上も、明確な日数を案内できないことがあります。

その場合に、薬剤師が勝手に数字を作って伝えるのは避けるべきです。

私は、明確な期限として案内できる数字が確認できない場合には、**「はっきり何日まで大丈夫とは言えないため、できるだけ早めに使ってください」**と説明するようにしています。

これは、患者さんにとっては少し物足りない回答に聞こえるかもしれません。

それでも、不確かな数字を断言するより、確認できる範囲と確認できない範囲を分けて説明する方が安全です。

また、個別の患者さんに対してその薬を使ってよいか、現在の症状が薬によるものか、このまま様子を見てよいか、といった個別判断は、メーカーが答えられる内容ではありません。

そのような場合は、医師や薬剤師側で判断する必要があります。

患者さんに症状がある場合、不安が強い場合、使用可否を個別に判断する必要がある場合は、医師の診察を受けるよう案内することもあります。

メーカーが答えられないのは、不親切だからではありません。役割が違うからです。

疑義照会とメーカー問い合わせは分けて考える

メーカー問い合わせと疑義照会は、確認する相手と目的が違います。

メーカー問い合わせは、薬そのものの情報、製剤上の注意点、保管方法、安定性、デバイスの扱い、資材の補足などを確認するものです。

一方で、疑義照会は、処方内容や処方意図、患者さんごとの判断を処方元へ確認するものです。

たとえば、薬の容器や保管方法についてはメーカーへ確認しやすい内容です。

しかし、なぜこの患者さんにこの薬が処方されているのか、この用量でよいのか、薬剤を変更すべきか、といった内容は処方元へ確認する内容です。

処方箋の内容に疑わしい点がある場合は、疑義照会が必要です。疑義があるのに確認せず、そのまま調剤することは避けなければなりません。

疑義照会が必要な場面では、患者さんに「処方元の先生に確認してもらう必要があります。診察の合間での確認になるため、少し時間がかかる場合があります」と説明することがあります。

メーカー問い合わせで済む内容なのか、処方元へ疑義照会すべき内容なのかは、薬剤師が慎重に判断する必要があります。

疑義照会の考え方については、こちらの記事でも詳しくまとめています。

関連記事:疑義照会が怖い薬剤師へ|処方意図を確認する考え方と準備

問い合わせには時間がかかる前提で考える

疑義照会でもメーカー問い合わせでも、基本的には時間がかかるものと考えておいた方がよいです。

メーカーへ問い合わせても、その場ですぐに回答が出るとは限りません。担当部署への確認が必要になったり、折り返しになることもあります。

そのため、患者さんへは「すぐに返答できます」と安易に言わない方がよいです。

急ぎの内容でなければ、「確認できたらご連絡します」と伝える方が現実的です。

処方箋の薬を渡しても問題ない内容であれば、先に薬をお渡しして、確認できてから後で連絡する方が、患者さんを長く待たせずに済む場合もあります。

ただし、疑義照会が必要な内容では、確認前に調剤できない場合があります。ここはメーカー問い合わせとは分けて考える必要があります。

急ぎの内容であれば、問い合わせ時に「患者さんが待っている」「本日中に判断が必要」など、急ぎであることを伝えた方がよい場合もあります。

患者さんには確認できた範囲を分かりやすく説明する

メーカーに確認しても、明確な答えが出ないことがあります。

その場合でも、患者さんへ「分かりません」とだけ伝えるのは不十分です。

なぜ答えられないのか。
どこまでなら確認できたのか。
次にどうすればよいのか。

この3つを、患者さんに分かる言葉で説明する必要があります。

たとえば、次のような説明です。

「その条件で保管した場合のデータは確認できませんでした。そのため、問題ないとは言い切れません」

「はっきり何日まで大丈夫とは言えないため、できるだけ早めに使用してください」

「症状がある場合や、不安が強い場合は、医師に相談してください」

「今回は個別の判断になるため、メーカーではなく診察で確認してもらう必要があります」

答えられないことを、そのまま突き放す必要はありません。

**患者さんに寄り添いながらも、不確かなことは断言しない。**この姿勢が大切だと思います。

メーカーから得た回答は、薬剤師が理解するための情報です。

患者さんへ説明するときは、その回答をそのまま伝えるのではなく、患者さんが理解できる言葉に置き換える必要があります。

患者さんが知りたいのは、多くの場合、専門的な根拠そのものではありません。

「この薬をどう使えばよいのか」
「今の状態で使ってよいのか」
「何に気をつければよいのか」
「次にどうすればよいのか」

ここを分かるように説明することが大切です。

また、100%言い切る表現は避けた方がよいです。

副作用についても、「絶対に出ません」「絶対に大丈夫です」とは言えません。過去にほとんど報告がないような副作用であっても、「可能性はかなり低いと考えられます」といった表現にした方が安全です。

推測で答える必要がある場合も、「これは私の推測ですが」と前置きして、根拠のある情報と推測を分けて説明する必要があります。

すぐに答えられる薬剤師は頼もしく見えるかもしれません。

しかし、即答できることが常に正しいわけではありません。

不確かな内容をその場で断言するより、「分からないので確認してからお伝えします」と正直に伝える方が、患者さんにとって安全な場合があります。

患者さんに分かりやすく説明する考え方については、こちらの記事でもまとめています。

関連記事:患者に薬を説明するのが苦手な薬剤師へ|専門用語を使わない服薬指導の考え方

問い合わせ内容は薬歴や店舗内で共有する

メーカーへ問い合わせた内容は、その場限りにしない方がよいです。

その患者さんに、毎回自分が対応できるとは限りません。別の薬剤師が対応する可能性もあります。

そのため、何を確認し、どのように説明したのかは、必要に応じて薬歴に残しておくことが大切です。

特定の患者さんだけでなく、今後ほかの患者さんにも使えそうな内容であれば、店舗内メモやスタッフ間で共有するのも有用です。

理想を言えば、自分だけが分かる記録ではなく、事情を知らない薬剤師が見ても説明できる形にしておくことです。

薬局業務では、非特定の誰かに引き継ぐつもりで記録しておくことが大切です。

一度調べた内容を薬局全体で使える知識にしていくことも、実務では重要だと思います。

メーカー問い合わせは、その場の問題を解決するためだけのものではありません。

本やインターネットでの勉強とは別に、実際に分からないことをメーカーへ確認することも、薬剤師にとって勉強になります。

問い合わせるためには、自分が何を分かっていないのかを整理する必要があります。

回答を聞くことで、添付文書やインタビューフォームの読み方が深まることもあります。

一度確認した内容は、次に同じ薬を扱うときの知識になります。

薬剤師として働く環境を見直したい場合

薬剤師として働くうえでは、分からないことを確認できる環境や、問い合わせた内容を店舗内で共有できる体制も大切です。

同じ薬局でも、教育体制、情報共有の仕組み、先輩薬剤師への相談のしやすさ、患者さん一人ひとりに使える時間は職場によって違います。

今の職場で学びにくい、相談しにくい、忙しすぎて確認する時間が取れないと感じる場合は、自分の働く環境を見直してみるのも一つの選択肢です。

転職をすぐに考えていなくても、他の薬局ではどのような働き方があるのかを知っておくと、今後のキャリアを考える材料になります。

まとめ

メーカー問い合わせは、薬剤師が患者さんへ正確に説明するための確認手段の一つです。

ただし、メーカーに聞けば何でも正解が分かるわけではありません。

まずは添付文書、インタビューフォーム、指導せん、メーカー資料を確認する。
それでも分からない場合に、何を確認したいのかを整理して問い合わせる。
回答が出ない場合でも、患者さんを突き放さず、分かる範囲と分からない範囲を分けて説明する。
個別判断が必要な場合は、医師の診察や処方元への確認につなげる。
確認した内容は薬歴や店舗内で共有する。

メーカーから得た回答は、薬剤師が判断するための情報の一つです。処方内容や患者さんの背景と照らし合わせ、必要に応じて処方元への確認や受診勧奨につなげることが大切です。

薬剤師は、すべてを暗記している必要はありません。

大切なのは、不確かなことを不確かなまま患者さんに伝えないことです。

分からないことをそのままにせず、必要な資料を確認し、必要に応じてメーカーへ問い合わせる。

そして、得られた情報を患者さんに分かる言葉で説明する。

それも、薬局で働く薬剤師の大切な実務だと思います。