薬剤師として働いていると、「もっと勉強しないといけない」と感じる場面は多いです。
しかし、薬剤師の仕事で必要な知識は幅広く、新人薬剤師やブランク明けの薬剤師であれば、「何から勉強すればいいのか」と迷いやすいと思います。
私自身も、調剤を始めたころは大学卒業から時間が経っており、学んだことをかなり忘れていました。
処方箋を見ても、何の薬かわからない。
用法用量が合っているのかわからない。
その患者さんに適した薬なのかも判断できない。
そのような状態で、かなり苦労しました。
その経験から思うのは、薬剤師の勉強は最初から全部を完璧にしようとするより、まずは自分の薬局でよく出る薬を、安全に説明できるようにすることから始めた方が現実的だということです。
この記事では、新人薬剤師、薬学生、ブランク明け薬剤師、調剤経験が浅い薬剤師に向けて、現場で困らないために何から勉強すればよいかを整理します。
薬剤師が学ぶことは多い
薬剤師が学ぶ内容は、薬の知識だけではありません。
薬効、用法用量、副作用、禁忌、併用薬、疾患、検査値、服薬指導、保険制度、患者対応、OTC、在宅や施設対応など、現場で必要になる知識は多くあります。
もちろん、どれも大切です。
ただ、最初からすべてを同じ優先度で勉強しようとすると、何から手をつければよいかわからなくなります。
現場でまず困るのは、基本的な確認ができない場面です。
この薬は何に使うのか。
この用法用量でよいのか。
患者さんにどう説明すればよいのか。
飲み忘れたときはどう答えればよいのか。
他の薬と一緒に使ってよいのか。
新人薬剤師やブランク明け薬剤師は、まずこのあたりから確認していく方が現実的です。
細かな薬理作用や薬物動態の理解も大切ですが、最初は自分の薬局でよく出る薬について、薬効・用法用量・注意点を説明できるようにすることを優先してよいと思います。
まずは薬局でよく出る薬から覚える
薬剤師の勉強で最初に取り組みやすいのは、自分の薬局でよく出る薬を覚えることです。
調剤を始めたころ、私は処方箋を見ても、その薬が何に使われるのかすぐにわかりませんでした。
大学で学んだ成分以外の薬は、基本的に何の薬か見当がつかないことも多かったです。
そのため、まずは薬局でよく出る薬、あるいは自分がわからなかった薬の添付文書を集めるところから始めました。
当時は今ほど電子化が進んでいなかったので、紙の添付文書を集めて、自分用に保管していました。
頻度順にきれいに整理していたというよりは、自分がわからない薬を見つけたら順番に集めていくような形です。
勤務中の空いた時間にも見ましたし、帰宅後に確認することもありました。
最初に重点的に見ていたのは、用法用量と薬効です。
つまり、この薬は何に効くのか、どのように使うのか、通常量はどのくらいなのか、小児・妊婦・授乳婦に使えるのか、禁忌は何か、という部分を優先して確認していました。
細かな薬理作用や薬物動態は、当時はほとんど見ていませんでした。副作用についても、すべてを細かく覚えるというより、有名なものや出やすいものを優先して確認していました。
患者さんから「これは何の薬ですか?」と聞かれることはよくあります。
そのときに、薬効や基本的な使い方を説明できないと、服薬指導で困ります。
最初は深い知識をすべて覚えるよりも、まずは現場でよく出る薬について、安全に説明できる状態を目指す方がよいと思います。
吸入薬、外用薬、漢方などは最初に困りやすい
調剤を始めたころに困った薬はいろいろあります。
たとえば、吸入薬です。
吸入薬は、薬ごとに器具の使い方が違います。
患者さんに説明するには、薬の成分だけでなく、吸い方、準備方法、吸入後の注意点なども理解しておく必要があります。
添付文書だけを見ても、実際にどう説明すればよいか迷うことがありました。
塗り薬も苦労しました。
特にステロイド外用薬の強さは、最初は全く把握していませんでした。
皮膚科の処方では、同じように見える外用薬でも、強さや使う部位、塗る量、使用期間などを確認する必要があります。
漢方薬も、細かいことを聞かれると説明できないことが多かったです。
「この漢方は何に効くのか」と聞かれたとき、添付文書上の効能効果を読むことはできても、患者さんにわかりやすく説明するのは簡単ではありませんでした。
妊娠中や授乳中の薬についても、最初は難しく感じました。
薬によっては、妊娠中や授乳中に注意が必要なものがあります。
ただ、当時は女性の患者さんに妊娠や授乳の有無を確認すること自体が、とても聞きにくいと感じていました。
今であれば、必要な確認として聞かなければならない場面があるとわかります。
しかし、最初のころは知識だけでなく、聞き方にも慣れていませんでした。
このように、薬剤師の勉強は薬の知識だけではありません。
実際には、患者さんにどう確認するか、どう説明するかも含めて学んでいく必要があります。
添付文書は最初に確認する基本資料
薬について調べるとき、まず確認したい基本資料が添付文書です。
効能効果、用法用量、禁忌、併用注意、副作用など、薬剤師が処方を確認するために必要な基本情報を確認できます。
調剤薬局に勤め始めたころ、私は「この薬は肝臓と腎臓のどちらの影響を受けやすいのか」「検査値によって用量調節が必要なのか」といったことも確認するように言われました。
最初は難しく感じましたが、薬によっては腎機能や肝機能、体重などによって用量を確認する必要があります。
最初からすべてを覚える必要はありませんが、「この薬は患者背景によって用量や使い方が変わる可能性がある」と意識し、必要なときに確認できることが大切だと思います。
一方で、添付文書には情報量が多く、患者さんへの説明方法までそのまま書かれているわけではありません。
添付文書で何を優先して確認するかについては、別の記事で詳しく整理しています。
関連記事:添付文書はどこを見る?調剤薬局でまず確認したいポイント
メーカーのホームページや問い合わせ窓口も活用する
添付文書やインタビューフォームを確認しても、判断に迷うことがあります。
そのような場合には、メーカーの公式資料を確認したり、問い合わせ窓口へ確認したりすることもあります。
メーカーのホームページには、患者さん向けの説明書や指導せん、薬の使い方、保管方法などの資料が用意されていることがあります。
私も新しい薬を扱うときは、事前にメーカー資料を見るようにしていました。
あらかじめ確認しておくと、実際にその薬が処方されたときにも対応しやすくなります。
ただし、メーカー問い合わせは、わからないことを最初から丸投げするためのものではありません。まず添付文書やインタビューフォームなどを確認し、それでもわからない情報を確認する手段として使います。
メーカーへ問い合わせる場面や、問い合わせ前に整理しておきたい内容については、こちらの記事で詳しくまとめています。
関連記事:メーカー問い合わせは薬剤師の大事な確認手段|添付文書で分からないときの調べ方
薬剤情報提供書から説明の言葉を学ぶ
患者さんにお渡しする薬剤情報提供書も、勉強に役立ちます。
薬剤情報提供書には、薬の使い方や効能が患者さん向けの言葉で書かれています。
薬剤師向けの正確な知識と、患者さんが理解しやすい説明は少し違います。
添付文書に書かれている表現をそのまま使うと、患者さんには伝わりにくいことがあります。
私も調剤を始めたころは、薬剤情報提供書の表現を見ながら、どのように説明すれば患者さんに伝わりやすいかを学びました。
専門用語を使わずに説明するという意味では、薬剤情報提供書の言葉はかなり参考になります。
もちろん、薬剤情報提供書だけで判断するのは不十分です。
正確な確認は添付文書やメーカー資料などで行い、患者さんへの説明の言葉を考えるときに薬剤情報提供書を参考にする、という使い方がよいと思います。
診療科や医師によって出る薬は変わる
薬局で出る薬は、門前の医療機関や診療科によって大きく変わります。
私が調剤を始めたころは、門前病院が大きく、使われる薬の幅が広かったため苦労しました。
病院や医師によって、よく使われる薬は違います。
同じ疾患でも、医師によって処方の傾向が違うこともあります。
処方意図についても、医師によって考え方が変わることがあります。
そのため、今でも新しい先生からの処方では、処方意図がすぐにはわからない場合があります。
慣れてくると、医療機関が違っても、診療科が同じであればある程度薬の傾向が見えてくることがあります。
たとえば、呼吸器、皮膚科、耳鼻科、循環器、整形外科など、診療科によってよく使う薬は変わります。
ただし、これは経験も必要です。
最初からすべての診療科の薬を広く覚えようとするより、まずは自分の薬局でよく見る処方から学んでいく方が現実的です。
診療科や門前薬局による処方内容の違いについては、こちらの記事でも整理しています。
関連記事:薬剤師の職場選びで診療科は重要?門前薬局と広域受付で変わる働き方
患者から聞かれたことは勉強ネタになる
患者さんから聞かれる内容は、そのまま勉強テーマになります。
たとえば、次のような質問です。
- この薬は何に効くのか
- 他の薬と一緒に飲んでよいか
- 飲み忘れたときはどうすればよいか
- いつまで飲めばよいか
- 副作用はあるか
- 食前、食後を間違えたらどうするか
- 眠気は出るか
- 車の運転はよいか
- 妊娠中、授乳中に使えるか
- 市販薬と一緒に使ってよいか
- 前の薬とどちらが強いのか
最初は、このような質問の多くにすぐ答えられませんでした。
特に「前の薬とどっちが強いですか」と聞かれると困ることが多かったです。
アレルギーの薬でも、糖尿病の薬でも、単純にどちらが強いと答えにくいことがあります。
薬の強さは、効果の出方、副作用、患者さんの状態、使う目的などによって見方が変わります。
そのため、今でも厳密に強弱を答えにくい薬では、断定せずに説明することがあります。
また、調剤を始めて間もないころに、患者さんから「薬をなるべく飲みたくない」と言われたことがありました。
そのときは、どう答えればよいのかかなり困りました。
当時は、病気を治したくて病院に行ったのではないのか、薬を出してもらったのではないのか、と思っていました。
しかし、今なら少し違う見方をします。
薬が飲みにくい、味がつらい、量が多い、飲んだ後の副作用がつらい、薬を続けること自体に抵抗があるなど、患者さんには患者さんなりの理由がある場合があります。
薬の知識だけでなく、患者さんが何に困っているのかを確認することも、現場で学んでいく必要があります。
患者さんから聞かれたことは、自分がまだ理解できていない部分を教えてくれる材料でもあります。
聞かれて困ったことを後で調べておくと、次に同じ質問をされたときに答えやすくなります。
わからないときは適当に答えない
薬剤師として大切なのは、わからないことをそのままにしないことです。
ただし、それと同じくらい大切なのが、わからないのに適当に答えないことです。
私も最初のころは、患者さんから質問されてもすぐに答えられないことがよくありました。
薬剤師なのにすぐ答えられないことに、恥ずかしさもありました。
患者さんから「薬剤師なのにわからないのか」と言われたこともあります。
それでも、間違ったことを伝えて健康被害が起きてはいけません。
根拠がないまま答えるよりも、確認してから伝える方が大切です。
投薬台の近くにパソコンなど情報を調べられる環境があれば、
「確認しますので、少しお待ちください」
と伝えて、その場で確認すればよいです。
近くに先輩薬剤師がいれば、先輩薬剤師に確認するのもよいです。
すぐに答えられない内容であれば、
「確認してからご連絡します」
と伝えて、後で調べて連絡することもあります。
私も確認して後で電話したことは何度もあります。
しっかり調べて伝えれば、患者さんは納得してくれることが多かったです。
もちろん、中にはかなり細かいことを聞いてくる患者さんもいます。
しかし、基本的には「確認します」と伝えて、すぐに答えないこと自体を強く責められることは多くありません。
薬剤師として危ないのは、わからないことではなく、わからないまま断定してしまうことだと思います。
勉強した内容は次に使える形で残す
薬について調べたら、調べて終わりにしないことも大切です。
最初のころ、私は調べたことをあまりメモに残していませんでした。
しかし、後から同じことをもう一度調べることが何度かありました。
そのため、調べた内容はなるべくメモに残すようにしました。
きれいなノートを作っていたわけではありません。
自分で持っていたメモ帳に、ざっと書くくらいです。
前に調べたことをすぐ確認できるように、白衣のポケットにメモ帳を入れていました。
大事なのは、きれいにまとめることではなく、次に同じ場面で困らないようにすることです。
たとえば、自分用のメモには次のような内容を残しておくと便利です。
- 何に効く薬か
- 患者さんに説明する一言
- よくある副作用
- よく聞かれる質問
- 飲み忘れたときの対応
- 注意すべき併用薬
- 疑義照会を考えるポイント
- 服薬指導で確認すること
薬歴にも、患者さんから聞かれたことは記録するようにしました。
以前どのような会話があったかを確認できると、次回の服薬指導にもつなげやすくなります。
分からないことを調べておくと、次に同じ場面になったときに戸惑いにくくなります。
答えられることが増えてくると、患者さんを相手にしていても、緊張したり落ち着かなかったりすることが少しずつ減っていきました。
新人・ブランク明けは質問できる環境も大事
自分で調べることは大切ですが、現場では一人で抱え込まないことも大切です。
特に新人薬剤師やブランク明け薬剤師の場合、質問できる環境があるかどうかは大きいです。
私の経験では、全員に聞きやすいわけではありませんでしたが、基本的にはどこの店舗にも聞きやすい人はいました。
その人がわかることであれば、すぐに教えてくれることもありました。
場合によっては、勉強のために自分で調べてみようと言われることもありました。
また、その人でもわからないことは、一緒に調べてくれることもありました。
聞いたことは、なるべくメモを取るようにしていました。
自分が聞く側だったころにそのような経験があったため、自分が教える側になったときには、聞かれやすい環境や聞きやすい雰囲気を作ることも大事だと思うようになりました。
新人薬剤師やブランク明け薬剤師にとって、研修制度や教育体制も大切です。
ただ、それだけでなく、日常業務の中でちょっとしたことを確認できる人がいるかどうかも重要です。
また、必要になる知識は働く場所によっても変わります。
調剤薬局では処方薬の確認や服薬指導が中心になりますが、ドラッグストアではOTC医薬品の相談や受診勧奨などの知識も必要になります。
どちらが簡単という話ではなく、今いる職場でどのような処方や相談が多いのかを見ながら、勉強する内容の優先順位を変えていくことが大切です。
大手薬局と中小薬局での研修体制や教育環境については、こちらの記事でも整理しています。
関連記事:大手薬局と中小薬局、薬剤師はどちらが働きやすい?転職前に確認したい違い
調剤薬局とドラッグストアで求められる働き方の違いについてはこちらです。
関連記事:薬剤師は調剤薬局とドラッグストアどっちが向いている?違いと選び方を経験者が解説
まとめ|薬剤師の勉強はよく出る薬と現場の疑問から始める
薬剤師の勉強は、最初に優先順位を決めることが大切です。
特に新人薬剤師やブランク明け薬剤師は、まず自分の薬局でよく出る薬から覚えるのが現実的です。
何に効く薬か、用法用量、患者さんにどう説明するか、飲み合わせや飲み忘れ時の対応などを、一つずつ確認していけばよいと思います。
正確な情報は添付文書やインタビューフォーム、メーカー資料などで確認し、患者さんへの説明では薬剤情報提供書や患者向け資料の表現も参考になります。
それでもわからない場合は、先輩薬剤師に確認する、メーカーへ問い合わせる、後から調べて患者さんへ連絡するなどの方法があります。
大切なのは、最初から何でも知っていることではなく、わからないことを適当に答えず、必要な情報を確認できることです。
そして、現場で困ったことや患者さんから聞かれたことを調べ、次に使える形で残していく。
その積み重ねが、少しずつ現場で使える知識になっていくと思います。

