薬剤師は処方箋のどこを見ている?|薬をそろえる前に確認していること

薬局薬剤師の働き方

新人の頃の私は、処方箋を見ても、どこを確認すればよいのかよくわかっていませんでした。

薬局で働く以上、処方箋に書かれた薬をそろえる仕事だということはわかります。
ただ、何に気をつければよいのか。
どこを見落とすと危ないのか。
薬を取る前に何を確認すべきなのか。

そこまでは、最初からわかっていたわけではありません。

薬の名前を見ても、何の薬なのかすぐにはわかりませんでした。
この薬は何に使うのか。
この量は多いのか少ないのか。
この飲み方でよいのか。

そういった判断ができるほどの知識も経験も、最初からあるわけではありません。

そのため、最初の頃は、まず処方箋に書かれた薬を取りそろえて、監査する薬剤師に渡す。
そこから始まりました。

薬の場所を覚える。
規格を確認する。
数量を間違えずにそろえる。
まずはその作業ができなければ、調剤の流れにも乗れません。

ただ、今になって振り返ると、薬剤師が処方箋を見るときは、薬の名前だけを見ているわけではありません。

薬を棚から取る前に、処方箋全体を見ています。

その処方箋で調剤できるのか。
患者さんに対して薬の種類や量は不自然ではないか。
確認が必要な点はないか。

そういったことを、薬をそろえる前の段階で見ています。

まず確認するのは、処方箋の有効期限

私が今、処方箋を受け取って最初に確認することの一つが、処方箋の有効期限です。

薬の内容を見る前に、そもそもその処方箋で調剤できるのかを確認します。

処方箋は、基本的には出された日を含めて4日以内に、薬局へ原本を持ち込む必要があります。
この4日以内には、土日や祝日も含まれます。

たとえば、金曜日に病院を受診して処方箋をもらった場合、金曜日を1日目として数えます。
その後、土日と祝日を挟んで連休明けに薬局へ持って行くと、すでに期限が切れている場合があります。

これは、患者さん側からするとわかりにくいところだと思います。

実際の現場感としても、処方箋に有効期限があることを知らない患者さんは少なくありません。
まして、「出された日を含めて4日以内」「土日祝日も含む」というところまで知っている方は、多くない印象です。

薬局側としては、どれだけ薬の在庫を確認しても、患者さんのアレルギー歴や副作用歴を確認しても、処方箋の期限が切れていれば、そのまま通常どおり調剤を進めることはできません。

そのため、処方箋を受け取った時点で、まず有効期限を確認します。

門前薬局では少なく、調剤併設ドラッグストアでは比較的見かけた

処方箋の期限切れについては、働く薬局の種類によって出会いやすさが違うと感じています。

門前薬局で働いていたときは、期限切れの処方箋を受けることはほとんどありませんでした。

門前薬局とは、病院やクリニックの近くにある薬局のことです。
近くの医療機関を受診した患者さんが、そのまま薬局へ来ることが多いため、処方箋を受け取った当日や翌日に持ち込まれることが多かったのだと思います。

一方で、大手の調剤併設ドラッグストアで働いていたときは、期限切れの処方箋を見る機会がもう少しありました。

ドラッグストアには、いろいろな地域からお客さんが来ます。
そのため、近くの病院だけでなく、遠方の病院や、普段あまり見ない医療機関の処方箋が持ち込まれることもあります。

遠方の病院を受診した場合、患者さんとしては、

「次に買い物へ行くときに、ついでに薬ももらおう」

と考えることがあるのかもしれません。

その結果、受診した当日ではなく、数日後に処方箋を持ってくることがあります。
特に、金曜日に受診して、土日と祝日を挟んだ3連休明けに持ってこられたときには、期限が切れていることもありました。

処方箋の期限は、一般の方にはあまり知られていません。
だからこそ、薬剤師側はまずそこを確認します。

薬の内容を見る前に、「この処方箋で調剤できるか」を見る。
これは、基本的ですが大切な確認です。

年齢は、処方内容を見る入口になる

処方箋の有効期限を確認した後は、患者さんの情報と処方内容を見ます。

その中でも、年齢はかなり重要です。

年齢によって、使える薬、使いにくい薬、量に注意が必要な薬が変わることがあります。
特に、小児と高齢者では注意して見ることが多くなります。

小児の場合は、「この薬だから注意する」というより、小児である時点でより慎重に見ます。

小児では、年齢によって使える薬の種類や量、剤形が変わることがあります。
剤形というのは、錠剤、カプセル、粉薬、シロップ、外用薬など、薬の形のことです。

小さい子どもでは、錠剤が飲めないこともあります。
粉薬やシロップが処方されることも多く、その場合は体重に合わせて量が調節されていることがあります。

そのため、小児の粉薬やシロップが処方されている場合には、現在の体重を確認し、処方量が大きく不自然ではないかを見ます。

年齢だけでなく、体重も大切です。

同じ5歳でも、体重は子どもによって違います。
薬によっては体重に応じて量を考えるため、年齢だけ見ていれば十分というわけではありません。

薬をそろえる前に、処方箋上の年齢、薬の種類、剤形、用量を見て、必要があれば体重を確認します。

高齢者では、量や腎機能、持病との関係を見る

高齢者の場合も、年齢だけで機械的に判断するわけではありません。

ただ、高齢者では体の機能が落ちていることも多く、同じ薬でも量や副作用に注意が必要になることがあります。

たとえば、薬によっては高齢者では成人量より少なめに設定されているものがあります。
睡眠薬やふらつきが問題になりやすい薬では、特に注意して見ることがあります。

また、高齢者では腎臓の働きが落ちていることもあります。

腎臓は、体の中の不要なものを外に出す働きに関わっています。
薬の中には、腎臓の働きに応じて量を調節する必要があるものがあります。

そのような薬が処方されている場合には、患者さんに血液検査で腎機能を確認しているか聞くこともあります。
腎機能というのは、腎臓がどのくらい働いているかを示すものです。

もちろん、薬局ですべての検査値が常にわかるわけではありません。
そのため、患者さんから検査の有無や医師からの説明を確認することがあります。

さらに、高齢の男性では、前立腺に関する治療を受けている方もいます。

前立腺は男性にある臓器で、高齢になると排尿に関するトラブルが出ることがあります。
そのような方に、抗コリン作用のある薬が出ている場合には、排尿に影響しないかを意識して確認します。

抗コリン作用というのは、薬の働きの一つです。
薬によっては、口の渇き、便秘、尿が出にくいなどの副作用に関わることがあります。

このように、高齢者では、薬の量だけではなく、腎機能や持病との関係も考えながら処方箋を見ています。

薬の名前だけでなく、量・剤形・用法も同時に見る

処方箋を見るとき、薬剤師は薬の名前だけを見ているわけではありません。

薬の名前を見ます。
規格を見ます。
剤形を見ます。
用量を見ます。
用法を見ます。
日数や数量も見ます。

規格というのは、同じ薬でも何mgなのか、どの濃度なのか、といった違いです。
たとえば同じ名前の薬でも、5mg、10mg、20mgのように複数の規格があることがあります。

用量は、1回に飲む量や1日に使う量です。
用法は、1日何回、いつ飲むかという飲み方です。

新人の頃は、薬の名前を見て薬をそろえるだけで精一杯でした。
しかし、実際には薬の名前だけ合っていても不十分です。

規格が違えば、薬の量が変わります。
剤形が違えば、患者さんが使えるかどうかに関わります。
用法が不自然であれば、処方意図を確認する必要があります。

たとえば、いつもと量が違う。
年齢に対して多く見える。
逆に、これまでよりかなり少なくなっている。
外用薬なのに使う場所がわからない。

このようなときには、薬を取る前に一度立ち止まります。

処方内容に違和感があれば、患者さんに確認することもある

処方箋を見て違和感があった場合、すぐに処方医へ確認することもあります。
一方で、まず患者さんに確認することもあります。

たとえば、これまで成人量で出ていた薬が、今回は少ない量で処方されていたとします。

処方箋上で用量の調節が可能な範囲であり、さらに患者さんから、

「先生から、今回は量を減らすと説明を受けています」

と確認できた場合には、そのまま調剤に進むこともあります。

医師が患者さんにしっかり説明したうえで、意図的に量を変更していることもあるからです。

一方で、患者さんから説明の有無が確認できない場合や、処方意図がわからない場合は、基本的に処方医へ確認します。
これが疑義照会です。

疑義照会とは、処方箋の内容について疑問点や確認が必要な点がある場合に、薬剤師が処方医へ確認することです。

薬剤師は、処方箋に書かれている内容をただ機械的にそろえているわけではありません。
患者さんから聞き取った内容も踏まえながら、処方内容がその患者さんに合っているかを確認しています。

実際には、これらを並行して見ている

ここまで、処方箋の有効期限、年齢、小児、高齢者、用量、剤形、用法と分けて書いてきました。

ただ、実際の現場では、これらを完全に順番通りに一つずつ見ているわけではありません。

処方箋を見ながら、いくつもの情報を並行して確認しています。

まず有効期限を見る。
患者さんの年齢を見る。
処方された薬の種類を見る。
量を見る。
剤形を見る。
用法を見る。
小児であれば、体重と量を意識する。
高齢者であれば、腎機能や副作用、持病との関係を意識する。

このような確認を、薬を棚から取る前にある程度行っています。

もちろん、すべてを最初の一瞬で完璧に判断できるわけではありません。
薬をそろえながら気づくこともありますし、監査の段階で改めて確認することもあります。

それでも、薬を取る前に処方箋全体を見ることで、あとから「そもそもこの処方は確認が必要だった」と気づくリスクを減らすことができます。

薬をそろえる前の確認が、ミスを防ぐ土台になる

調剤のミスというと、薬を棚から取るときの間違いを思い浮かべる方が多いかもしれません。

もちろん、薬の取り間違い、規格違い、数量間違いは注意が必要です。
しかし、ミスを防ぐためには、薬を取る前の確認も大切です。

処方箋の期限は切れていないか。
患者さんの年齢に対して、薬の量は不自然ではないか。
小児であれば、体重に対して量は大きく外れていないか。
高齢者であれば、量や副作用、腎機能に注意が必要ではないか。
用法や剤形に違和感はないか。
患者さんや医師への確認が必要な点はないか。

こうした確認をしたうえで、薬をそろえます。

新人の頃の私は、処方箋を見ても何を確認すればよいのかわからず、まずは薬を取りそろえることで精一杯でした。

しかし、経験を重ねる中で、薬剤師は処方箋の薬の名前だけを見ているわけではないとわかってきました。

処方箋の有効期限を見る。
患者さんの年齢を見る。
薬の量や使い方を見る。
その患者さんに合っているかを考える。
必要であれば、患者さんに確認し、処方医へ疑義照会する。

薬をそろえる前のこの確認が、調剤ミスを防ぐための土台になります。

薬剤師の仕事は、処方箋に書かれた薬をただ棚から取るだけではありません。

処方箋を見て、薬をそろえる前に立ち止まる。
そこにも、薬剤師の大切な役割があると思っています。

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