2026年2月2日から、レボノルゲストレルを有効成分とする緊急避妊薬を、医師の処方箋なしで購入できる仕組みが始まりました。
「緊急避妊薬がOTCになった」と聞くと、一般的な市販薬と同じように、どこの薬局やドラッグストアでも購入できるようになったと考えるかもしれません。
しかし、実際には販売できる薬剤師と店舗の双方に条件があり、どこでも販売できるわけではありません。
この記事では、薬そのものの作用や避妊効果を詳しく解説するのではなく、緊急避妊薬のOTC販売制度と、薬局・薬剤師が実際にどう関わるのかを整理します。
※本記事は2026年10月22日時点の厚生労働省・PMDA等の情報をもとにしています。
この記事の要点
緊急避妊薬は処方箋なしで購入できますが、販売できる薬剤師と店舗には条件があります。
OTCとして購入する場合と、医師の診療後に処方薬として調剤を受ける場合は別の仕組みです。
自店舗で対応できない場合は、厚生労働省の最新一覧などを確認し、次に利用できる薬局や医療機関へつなぐ必要があります。
緊急避妊薬はOTC化しても、どの薬局でも買えるわけではない
厚生労働省は、緊急避妊薬を販売可能な薬局等の一覧を公開しています。
2026年10月22日時点で確認できる最新版は2026年10月1日更新です。一覧は原則として毎月上旬に更新され、追加だけでなく削除される場合もあります。
また、一覧に掲載された店舗でも、在庫や販売可能な薬剤師の勤務状況によっては、その時点で販売できないことがあります。購入前に店舗へ電話して確認することも推奨されています。
一般的なOTCのように「店頭へ行けば購入できる」と考えるのではなく、販売可能な店舗と薬剤師の両方を確認する必要がある医薬品と考えた方が分かりやすいでしょう。
2026年2月から緊急避妊薬の販売はどう変わったのか
処方箋なしで要指導医薬品として購入できるようになった
レボノルゲストレル1.5mgを含む「ノルレボ」は2025年10月20日に要指導医薬品として承認され、2026年2月2日に販売が開始されました。
その後、「レソエル72」も2026年2月10日に承認され、3月9日に販売が開始されています。2026年10月時点では、両製品が要指導医薬品一覧に掲載されています。
この記事では分かりやすさから「OTC販売」「OTC化」という表現を使いますが、通常の一般用医薬品と同じ販売方法になったわけではありません。
要指導医薬品の中でも「特定要指導医薬品」に指定されている
ノルレボとレソエル72は、要指導医薬品であると同時に特定要指導医薬品にも指定されています。
特定要指導医薬品は対面販売が必要な要指導医薬品として位置づけられており、緊急避妊薬では面前服用を確保するためにこの区分へ指定されています。詳しい制度上の位置づけは、特定要指導医薬品への指定に関する厚生労働省資料で確認できます。
そのため、処方箋なしで購入できるようになった一方、通常のOTCとは異なる販売ルールがあると考えると分かりやすいです。
OTCには、薬の種類によって通常とは異なる販売ルールが設けられているものがあります。別の制度ですが、指定濫用防止医薬品の販売ルールについては以下の記事で整理しています。
関連記事:指定濫用防止医薬品とは?販売ルールと確認事項を薬剤師向けに整理
緊急避妊薬を販売できる薬剤師・薬局には条件がある
販売する薬剤師には研修と申告が必要
販売を希望する薬剤師は、日本薬剤師研修センターが実施する「緊急避妊薬の調剤及び販売に関するe-ラーニング」を修了する必要があります。
さらに、薬局の管理者または店舗管理者の許可を得たうえで、厚生労働省へ必要な情報を申告します。
これらの薬剤師・店舗に関する要件は、緊急避妊薬を調剤・販売する薬剤師及び販売する薬局・店舗販売業の店舗についてで示されています。
販売申告には所属店舗の「薬局等番号」が必要で、まだ取得していない店舗では先に管理者が申請する仕組みです。申告方法や関連情報は、緊急避妊薬の調剤・販売についてにまとめられています。
販売可能薬剤師を確認する一覧も公開されており、そこに記載されていない薬剤師は販売できません。
つまり、薬剤師免許があることや研修を修了したことだけで、すぐに販売できる制度ではありません。
薬局・店舗側にも販売できる体制が必要
薬剤師個人だけでなく、店舗側にも要件があります。
販売する薬局・店舗では、研修を修了した薬剤師が勤務していることに加え、プライバシーに十分配慮できること、服用のための飲料水等を確保できること、近隣の産婦人科医等との連携体制があることが求められています。
緊急避妊薬を適正に備蓄することも必要です。
そのため、薬剤師個人の条件だけでなく、店舗側の体制まで整って初めて販売につながります。
近隣の産婦人科医等との連携は、連絡先を知っているだけではない
薬局では普段から、必要に応じて近隣医療機関を案内することがあります。
私自身も近隣医療機関の連絡先を確認できるようにしており、薬局で対応できない場合に案内や照会を行ったことがあります。
ただし、緊急避妊薬のOTC販売で求められる「近隣の産婦人科医等との連携体制」は、単に近くの産婦人科の連絡先を把握しているという意味ではありません。
都道府県薬剤師会と都道府県医師会の間で管理・共有する名簿への掲載によって連携体制とする方法が示されています。名簿による対応が難しい場合などには、個別の産婦人科医療機関との連携体制を整える方法もあります。
具体的な方法は、緊急避妊薬を販売する薬局等と近隣の産婦人科医等との連携体制に関する通知で確認できます。
必要な場合に医療機関へつなげられる体制そのものが、販売要件の一つになっている点が特徴です。
販売時に薬剤師は何を確認・説明するのか
チェックシートを使って販売適格性を確認する
販売時には、製造販売業者が作成したチェックシートを使い、薬剤師が販売適格性を確認します。
この記事では個々の医学的な確認項目までは詳しく扱いませんが、単に商品を渡して服用方法を説明するだけの販売ではありません。
また、使用したチェックシートは必要な販売記録と合わせて、販売から2年間、薬局等で保存することとされています。
市販薬やサプリを含め、なぜ薬剤師が処方薬以外の使用状況まで確認するのかについては、以下の記事で整理しています。
関連記事:薬剤師が市販薬やサプリを確認する理由|飲み合わせだけではない注意点
対面で説明を受け、その場で服用する
緊急避妊薬では、薬剤師による対面販売と面前服用が求められています。
つまり、購入後に自宅へ持ち帰って、後から服用する仕組みではありません。
ノルレボの用法・用量や注意事項は、PMDAのノルレボ添付文書情報でも確認できます。
また、薬剤師は避妊成否を確認するため、服用3週間後を目安に産婦人科を受診するか、妊娠検査薬を使用して妊娠の有無を確認するよう説明します。
未成年だから一律に販売できないわけではない
現在の制度では、使用年齢に一律の制限は設けられておらず、保護者の同意も一律の販売条件とはしていません。
この年齢制限や保護者同意の考え方については、緊急避妊薬のOTC化に関する厚生労働省の審議資料でも確認できます。
一方で、性交同意年齢である16歳未満の場合には、避妊指導等の観点から産婦人科や小児科への受診勧奨が必要です。
短期間に繰り返し購入する場合についても、目安として3か月に2回以上であれば受診勧奨を行います。また、18歳未満で虐待が疑われる場合には児童相談所への通告が求められます。
購入者本人であることや年齢については可能な限り確認することが望ましいとされていますが、各種証明書等による確認そのものが必須とされているわけではありません。
年齢だけで販売可否を判断するのではなく、必要に応じて医療や支援へつなぐところまで含めて考える制度になっています。
OTCで購入する場合と処方箋で調剤する場合は別の仕組み
「薬局で緊急避妊薬を受け取る」という点だけを見ると同じように見えますが、OTCとして購入する場合と、医師の処方を受けて調剤する場合は別の仕組みです。
| OTCとして購入 | 対面診療後に処方 | オンライン診療後に処方 | |
|---|---|---|---|
| 医師の診療 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 処方箋 | 不要 | あり | あり |
| 薬の位置づけ | 要指導医薬品 | 医療用医薬品 | 医療用医薬品 |
| 薬局での対応 | 緊急避妊薬のOTC販売 | 通常の処方箋調剤 | オンライン診療後の緊急避妊薬調剤 |
| 対応薬剤師 | 研修・申告等が必要 | 通常の処方箋調剤 | 所定の研修・申告等が必要 |
| 専用の公表一覧 | あり | なし | あり |
オンライン診療後の調剤にも別の対応薬局・薬剤師一覧がある
オンライン診療で緊急避妊薬が処方された場合は、OTCを購入するのではありません。
医師の診療と処方を受けた後に、医療用医薬品として調剤を受ける仕組みです。
オンライン診療後の調剤については、OTC販売とは別に緊急避妊薬の調剤に対応可能な薬局・薬剤師一覧が公開されています。
2026年10月22日時点で確認できる一覧は、2026年9月17日現在のものです。
したがって、
「処方箋なしで緊急避妊薬を購入したい」
という相談と、
「オンライン診療を受けて緊急避妊薬が処方された」
という相談では、確認する仕組みが異なります。
患者から「ここで買えますか?」と聞かれたときはどう対応するか
自店舗で販売できる状態かを確認する
ドラッグストア勤務時代には、電話で「薬剤師は何時にいますか?」と聞かれることが何度かありました。
第1類医薬品など、薬剤師の勤務状況によって販売できるかどうかが変わる商品があるためです。
ただし、緊急避妊薬では単に「今日は薬剤師がいます」だけでは判断できません。
自店舗が販売可能な薬局等として掲載されているか、その時間に販売可能な薬剤師が勤務しているか、在庫があるかを確認する必要があります。
自店舗で販売できない場合は次の選択肢につなぐ
私自身、処方薬が出荷調整となり、入荷の見込みが立たず近隣からの確保もできなかった際に、処方元医療機関の近くの薬局で相談してもらうよう案内したことがあります。
ドラッグストア勤務時代にも、自店舗では扱えないPB商品や販売経路が限られたOTCについて、購入できる場所を案内した経験があります。
緊急避妊薬では時間の問題もあるため、同じ方法をそのまま当てはめることはできません。
自店舗で販売できない場合には、最新の販売可能薬局等一覧を確認し、候補となる店舗の在庫や販売可能薬剤師の勤務状況を確認して案内するという流れが考えやすいでしょう。
状況によっては、産婦人科等への受診につなぐことも選択肢になります。
販売可能な薬局等の一覧は原則毎月更新されるため、以前保存した一覧ではなく、問い合わせを受けた時点で最新情報を確認することが重要です。
「当店では販売できません」で終わらせず、次にどこへ相談できるかまで案内する視点を持っておきたいところです。
まとめ|緊急避妊薬のOTC販売は薬剤師と店舗の両方に条件がある
2026年2月から緊急避妊薬を処方箋なしで購入できるようになりましたが、通常のOTCと同じように、どの店舗でも販売できるわけではありません。
販売する薬剤師には研修や申告が必要で、店舗側にもプライバシーへの配慮や近隣の産婦人科医等との連携体制などが求められます。
また、OTCとして購入する場合と、医師の診療後に処方薬として調剤を受ける場合は別の仕組みです。
患者から問い合わせを受けた際には、自店舗で対応できるかを確認し、難しい場合には最新の販売可能薬局等一覧などを使って次の選択肢につなぐ必要があります。
緊急避妊薬のOTC販売では、薬そのものの知識だけでなく、販売制度と、必要な医療・支援へつなぐ仕組みを理解しておくことも薬剤師に求められます。

