薬局で薬をもらうときに、
「お薬は余っていませんか?」
「前回のお薬は残っていませんか?」
と聞かれたことがある方もいると思います。
この質問をされると、人によっては少し答えにくいかもしれません。
「飲み忘れていると思われるのではないか」
「ちゃんと飲んでいないと怒られるのではないか」
「余っていると言ったら、何か注意されるのではないか」
そのように感じる方もいると思います。
実際に薬局で残薬を確認すると、「すみません、少し余っています」と申し訳なさそうに話される方もいます。
ですが、薬が余っていることを伝えるのに、謝る必要はありません。
薬局で残薬を確認するのは、患者さんを責めるためではありません。
薬が実際に飲めているか、飲みにくい理由がないかを確認するためです。
今回は、薬局で残薬を聞かれる理由について、薬剤師の立場から書いていきます。
残薬とは、家に余っている薬のこと
残薬とは、簡単に言えば、家に余っている薬のことです。
以前にもらった薬が飲みきれずに残っている場合もあります。
痛み止めや吐き気止めのように、必要なときだけ使う薬が残っている場合もあります。
薬が変更になり、前の薬が家に残っている場合もあります。
残薬があること自体が、すぐに悪いというわけではありません。
大事なのは、なぜ薬が余っているのかを確認することです。
理由によって、対応は変わります。
そのため薬局では、薬が残っていないかを確認することがあります。
残薬を聞くのは、患者さんを責めるためではない
薬が余っていると聞くと、「ちゃんと飲めていないと思われる」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、薬を毎回きっちり飲み切る・使い切ることは、実際には簡単ではありません。
飲み忘れることもあります。
症状がよくなってきたために、途中でやめてしまうこともあります。
痛み止めや吐き気止めのように、必要なときだけ使う薬であれば、使わずに残ることもあります。
塗り薬や貼り薬などは、使う量や症状によって残り方が変わることもあります。
そのため、薬が余っていること自体を責めたいわけではありません。
ただし、薬は治療のために出されているものです。
そのため、「飲めなくても仕方ない」「余っていても気にしなくてよい」という意味ではありません。
飲み忘れを減らす工夫をすることや、自己判断で中止しないことは大切です。
薬を続けるためには、患者さん自身の意識も必要になります。
一方で、薬の形や味が苦手、仕事や学校で飲むタイミングがない、副作用が気になるなど、自分だけでは解決しにくい理由があることもあります。
そのような場合は、無理に隠したり、自己判断でやめたりするのではなく、薬局や医師に相談してもらえると対応を考えやすくなります。
むしろ、正直に伝えてもらった方が、薬局としても確認しやすくなります。
なぜ余っているのか。
同じ薬を受け取りすぎていないか。
今後どうすれば薬を続けやすくなるか。
こうしたことを考えるために、残薬を確認しています。
お薬手帳だけでは分からないことがある
薬局では、お薬手帳を確認することがあります。
お薬手帳は、今までにどんな薬が出ているかを確認するために役立ちます。
一方で、残薬確認は、その薬が実際に飲めているかを確認するために役立ちます。
お薬手帳で分かるのは、どのような薬が処方されているかという情報です。
しかし、その薬を実際に続けて飲めているかどうかまでは分かりません。
処方箋に薬が書かれていて、薬局で薬を受け取っていても、その薬を毎回予定どおりに飲めているとは限りません。
薬は、毎日の生活の中で使うものです。
生活のリズム、仕事、食事の時間、薬の数、副作用への不安など、いろいろな事情で飲みにくくなることがあります。
だからこそ、薬局では「薬が出ているか」だけでなく、「実際に飲めているか」も確認する必要があります。
薬局でお薬手帳を確認する理由については、こちらの記事でも整理しています。
関連記事:薬局でお薬手帳を出す意味
薬が余る理由は、飲み忘れだけではない
薬が余っていると聞くと、「飲み忘れ」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、飲み忘れで薬が余ることはあります。
しかし、理由はそれだけではありません。
たとえば、昼の薬だけ余っている場合があります。
この場合、朝や夕の薬は飲めていても、昼だけ飲みにくい生活をしているのかもしれません。
仕事中に薬を飲むタイミングがない、外出先で薬を出すのが難しい、昼食の時間が不規則といった事情が考えられます。
朝の薬が余る場合は、朝食を食べない、朝が忙しい、起きる時間が日によって違うなど、生活リズムが関係していることもあります。
また、副作用や不安が理由で薬が余ることもあります。
薬を飲むと眠くなる。
胃が気持ち悪くなる。
ふらつく感じがする。
長く飲み続けて大丈夫なのか不安がある。
症状がよくなったので、もう飲まなくてよいと思った。
このような理由で、薬を自己判断で減らしたり、中止したりする方もいます。
薬によっては、症状が落ち着いても続ける意味があるものがあります。
血圧、血糖、コレステロールなどに関わる薬は、症状の変化を自分では感じにくいこともあるため、自己判断で中止してよいとは限りません。
薬が余っているという情報だけでは、理由までは分かりません。
しかし、どの薬が、どのくらい、どのタイミングで余っているかを確認すると、薬が生活に合っているかどうかが見えてくることがあります。
薬の変更で残薬になることもある
残薬は、治療の途中で薬が変更された場合にも起こります。
医師の判断で、薬が別のものに変わることはよくあります。
症状の変化、副作用、効果の出方、飲みにくさなど、理由はいろいろです。
その場合、前にもらった薬がまだ残っていても、別の薬に切り替わることがあります。
これは治療の経過として起こることなので、残薬があること自体が悪いわけではありません。
ただし、前の薬が残っているからといって、自己判断で使い続けるのは避けた方がよい場合があります。
薬が変更になったときは、前の薬をどうするかも確認しておくと安心です。
頓服薬が余る場合と、毎日飲む薬が余る場合は意味が違う
残薬といっても、薬の種類によって意味が変わります。
たとえば、痛み止め、吐き気止め、咳止め、便秘薬など、症状があるときだけ使う薬があります。
このような薬は、使う機会がなければ余ることがあります。
症状が出なかった。
痛みが軽くて使わなかった。
吐き気が落ち着いていた。
便秘が改善して使わなかった。
このような場合、薬が余っていること自体が問題とは限りません。
一方で、毎日飲む前提の薬が多く余っている場合は、少し見方が変わります。
飲み忘れが多いのか。
飲みにくい理由があるのか。
副作用が気になっているのか。
薬の必要性が分かりにくいのか。
こうした確認が必要になることがあります。
つまり、残薬があるかどうかだけでなく、どの薬が余っているかも大切です。
頓服薬が余っているのか。
毎日飲む薬が余っているのか。
朝の薬だけなのか。
昼の薬だけなのか。
全部の薬が同じように余っているのか。
こうした情報から、薬が実際に飲めているかを確認しやすくなります。
残薬があるときは、分かる範囲で伝えてよい
家に薬が余っている場合は、薬局で正直に伝えて大丈夫です。
「少し余っています」
「何日分くらい残っています」
「昼の薬だけ余っています」
「痛み止めはまだ家にあります」
「副作用が気になって飲めていません」
「症状がよくなったので途中でやめていました」
このように、分かる範囲で伝えてもらえれば確認できます。
正確な数が分かっていれば、もちろん確認しやすくなります。
しかし、数が分からなくても、「この薬が少し残っている」「けっこう余っている気がする」という情報だけでも助かります。
可能であれば、余っている薬を薬局に持ってきてもらうと確認しやすいです。
薬の名前、残っている数、いつもらった薬なのかを見ながら確認できます。
本人ではなく、家族が薬を管理している場合もあります。
また、家族の薬を代わりに受け取りに来る方もいます。
その場合も、薬が余っている、飲み間違いが心配、薬が多くて管理しにくいといったことがあれば、薬局で相談して大丈夫です。
薬局で体調や薬の使用状況を確認される理由については、こちらの記事でも整理しています。
関連記事:薬局で毎回いろいろ聞かれる理由|薬剤師が確認していること。
残薬が増えると、薬の管理が難しくなることがある
少量の残薬であれば、すぐに調整が必要とは限りません。
しかし、家に残っている薬が増えてくると、管理が難しくなることがあります。
たとえば、今飲んでいる薬と、以前中止になった薬が混ざってしまうことがあります。
見た目が似ている薬もあるため、自己判断で使うと、今は不要な薬を飲んでしまう可能性もあります。
また、薬には期限があります。
薬の包装に期限が書かれているものもありますが、すべての薬で患者さんが期限を確認しやすいとは限りません。
薬局で1回分ずつ袋にまとめた薬や、軟膏・クリームを混ぜて調剤した薬などは、元の薬の期限よりも早めに使った方がよい場合があります。
同じ薬でも、受け取った時期によって期限が違うことがあります。
残薬が増えてくると、「どれが新しい薬で、どれが古い薬なのか」が分かりにくくなることがあります。
使用期限が過ぎている薬、いつもらったか分からない薬、湿気や高温の場所に置いていた薬などは、そのまま使わない方がよい場合があります。
以前と似たような症状だからといって、家に残っている薬を自己判断で使うのは避けた方がよい場合があります。
今の症状に合わなかったり、今飲んでいる薬と重なったりすることもあるためです。
余っている薬がある場合は、捨てる前、使う前に、一度相談してもらえると確認しやすくなります。
残薬が多い場合、医師に確認して調整することがある
残薬が多い場合、薬局で確認したうえで、医師に確認することがあります。
ここで大切なのは、薬局が勝手に薬の日数を変えるわけではないということです。
処方箋に書かれた薬の日数を、薬局の判断だけで勝手に減らすわけではありません。
残薬が多く、調整が必要と考えられる場合は、必要に応じて医師に確認します。
たとえば、同じ薬が家に十分残っている場合、今回も同じ日数で薬を受け取ると、さらに薬が余ってしまうことがあります。
そのような場合、処方内容について医師に確認し、必要に応じて日数を見直すことがあります。
少量の残薬であれば、あえてそのままにすることもあります。
体調不良や悪天候などで予定どおりに受診できない場合もあるため、薬によっては少し余裕があった方が安心なこともあります。
一方で、残薬が多い場合は、今後さらに薬が余らないよう調整を検討することがあります。
残っていても問題ない量や状況かどうかは、薬の種類、病状、受診間隔、医師の判断によって変わります。
そのため、自己判断で決めるのではなく、医師や薬剤師と相談することが大切です。
残薬を確認することで、必要以上に同じ薬を受け取らずに済む場合があります。
結果として、薬代や医療費の負担を抑えられる場合もあります。
残薬が多く、処方内容の調整が必要な場合に薬局から医師へ確認することがあります。
関連記事:薬剤師が疑義照会するのはどんな時?|医師に確認する理由と実際の場面
残薬確認は、薬を続けやすくするきっかけにもなる
残薬確認というと、薬を減らすための確認だと思われるかもしれません。
しかし、実際にはそれだけではありません。
残薬を確認することで、薬を無理なく続けるための方法を考えられる場合があります。
たとえば、薬の数が多くて管理しにくい場合は、複数の薬を1回分ずつ袋にまとめる方法を相談できることがあります。
薬を飲むタイミングごとに入れておくカレンダーのような道具を使い、飲み忘れを確認しやすくする方法もあります。
飲むタイミングが生活に合っていない場合は、医師に確認したうえで、飲み方を見直せることもあります。
薬の必要性が分からない場合は、その薬が何のために出ているのかを説明することで、続けやすくなることもあります。
残薬確認は、単に薬を減らすためだけのものではありません。
薬を無理なく続けられているか、続けにくい理由がないかを確認するためのものです。
まとめ:残薬確認は、薬を続けやすくするための確認
薬局で残薬を聞かれると、少し答えにくいと感じる方もいるかもしれません。
しかし、残薬確認は、患者さんを責めるためのものではありません。
ただし、薬は治療のために出されているものです。
できる範囲で予定どおり続けることや、自己判断で中止しないことも大切です。
薬が余る理由は、飲み忘れだけではありません。
生活リズム、副作用への不安、薬の変更、飲みにくさなど、いろいろな事情が関係していることがあります。
家に薬が余っている場合は、薬局で正直に伝えて大丈夫です。
正確な数が分からなくても、分かる範囲で伝えてもらえれば確認できます。
残薬が多い場合は、必要に応じて医師に確認し、処方日数を調整することもあります。
また、薬を減らすだけでなく、薬を続けやすくする方法を考えるきっかけにもなります。
残薬確認は、薬を無理なく、必要な形で続けていくための確認です。
薬が余っているときは、遠慮せず薬局で相談してもらえればと思います。

