花粉症の処方を見ていると、抗ヒスタミン薬だけで終わることもあれば、点鼻薬や点眼薬、抗ロイコトリエン薬などが一緒に処方されることもあります。
患者さんからも、
「アレルギーの薬が何種類も出ていますが、全部同じ薬ですか?」
「去年より薬が増えたのは、花粉症がひどくなったということですか?」
と聞かれることがあります。
花粉症の薬は、単純に「どれが強いか」で並べるより、どの症状を狙っている薬なのかで考えた方が整理しやすくなります。
くしゃみや鼻水が中心なのか、鼻づまりが強いのか、目のかゆみもあるのか。同じ花粉症でも症状の出方は患者さんごとに違い、同じ患者さんでも前年と今年で変わることがあります。
この記事では、花粉症治療全体を見ながら、なぜ飲み薬だけでなく点鼻薬や点眼薬が使われるのか、薬剤師が処方を見るときに何を確認しているのかを整理します。
花粉症の薬は「強さ」ではなく症状で考える
花粉症という一つの病名でも、困っている症状は同じとは限りません。
ある人はくしゃみと鼻水が中心で、別の人は鼻づまりが一番つらい。さらに、鼻症状より目のかゆみが気になる人もいます。
花粉症の治療では、こうした症状の型や重症度に応じて薬が選ばれます。くしゃみ・鼻水では第2世代抗ヒスタミン薬が中心になりやすく、鼻づまりが目立つ場合には鼻噴霧用ステロイド薬や抗ロイコトリエン薬なども重要になります。目症状には点眼薬が使われます。
そのため、同じ患者さんでも、その年の症状によって処方内容が変わることがあります。
前年はくしゃみと鼻水が中心だったものの、今年は鼻づまりが強い。あるいは、鼻症状は大きく変わらなくても、今年は目のかゆみが強い。
こうした違いが、処方される薬の組み合わせにも反映されます。
くしゃみ・鼻水には抗ヒスタミン薬が中心になりやすい
花粉症でよく使われる飲み薬の一つが、第2世代抗ヒスタミン薬です。
花粉がきっかけとなってアレルギー反応が起こると、ヒスタミンという物質がくしゃみ、鼻水、鼻のかゆみなどに関わります。抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンの働きを抑える方向の薬です。
患者さんには、
「くしゃみ、鼻水、鼻のむずむずを抑える方の薬です」
と説明すると役割を伝えやすくなります。
ただし、第2世代抗ヒスタミン薬であればどれも同じというわけではありません。眠気、服用回数、食事の影響、年齢や剤形などに違いがあります。
抗ヒスタミン薬ごとの違いについては、別記事で詳しく整理しています。
関連記事:抗ヒスタミン薬は何が違う?強さだけでなく眠気・服用回数・食事の影響を薬剤師が整理
この記事では個々の抗ヒスタミン薬を比較するより、まずは「くしゃみや鼻水を中心に見る薬」という位置づけを押さえておけば十分です。
鼻づまりでは点鼻薬や別系統の薬が加わることがある
花粉症の服薬指導をしていると、
「くしゃみと鼻水はだいぶ良くなったけれど、鼻づまりが残っています」
と言われることがあります。
抗ヒスタミン薬を飲んでいるからといって、花粉症のすべての症状が同じように改善するとは限りません。
鼻づまりが目立つ場合には、鼻噴霧用ステロイド薬や抗ロイコトリエン薬など、別の方向から鼻症状に作用する薬が使われることがあります。
鼻噴霧用ステロイド薬は、鼻粘膜のアレルギー炎症を抑える薬です。鼻づまりだけでなく、くしゃみ・鼻水も含めて広く症状を改善する薬で、鼻づまりが強いときには特に重要な選択肢になります。
点鼻薬には複数の種類があり、それぞれ役割や使い方が違います。詳しい分類や使用方法については、別記事で整理しています。
関連記事:点鼻薬の違いと使い方|ステロイド点鼻・血管収縮薬・抗アレルギー薬を薬剤師が整理
また、実際の投薬では、
「去年より薬が増えたんですが、今年はそんなに悪いんでしょうか」
と聞かれることもあります。
そのようなとき、私は薬の数だけを見て説明するのではなく、
「くしゃみはどうですか」
「鼻水は去年と比べてどうですか」
「鼻づまりはありますか」
「前回より楽になっていますか」
といった現在の症状を確認してから、追加された薬の役割を説明するようにしています。
たとえば、くしゃみと鼻水は抗ヒスタミン薬である程度落ち着いているものの、鼻づまりが残っているので別系統の薬が加わっているのであれば、
「薬が増えたというより、残っている鼻づまりに別の方向から対応する薬が追加されています」
と説明できます。
薬が増えた=単純に症状全体が悪化した、と考えるのではなく、どの症状に対して薬が追加されたのかを見ることが大切です。
抗ロイコトリエン薬は抗ヒスタミン薬と何が違うのか
モンテルカストやプランルカストは、抗ロイコトリエン薬と呼ばれる薬です。
抗ヒスタミン薬とは違う仕組みからアレルギー反応に作用し、アレルギー性鼻炎に使われます。
ガイドライン上でも、抗ロイコトリエン薬は鼻閉型(鼻づまりが中心のタイプ)などで使われる薬として位置づけられています。
患者さんには細かい薬理作用を説明するより、
「抗ヒスタミン薬とは違う仕組みからアレルギー反応を抑える薬です」
「鼻づまりを考えて使われることがある薬です」
と説明した方が伝わりやすいことがあります。
モンテルカストやプランルカストは、気管支喘息にも使われる薬です。そのため、喘息とアレルギー性鼻炎の両方がある患者さんでは、それぞれの文脈を踏まえて処方されることがあります。
ラマトロバンもアレルギー性鼻炎に使われる別系統の薬で、鼻づまりを含む鼻症状を考えて使われることがあります。
ラマトロバンは出血に関係する注意点があるため、抗血小板薬や抗凝固薬などの併用薬も確認します。
出血に関係する併用薬や患者背景を確認することも、薬剤師の基本的な確認の一つです。
目のかゆみには点眼薬を使う理由
花粉症では、鼻だけでなく目にも症状が出ます。
目のかゆみ、充血、涙目などがある場合には、抗アレルギー点眼薬などが使われます。花粉症に伴うアレルギー性結膜炎では、抗アレルギー点眼薬が治療の基本として位置づけられています。
「目がかゆいから目薬が出ている」
ということは、患者さんにも比較的理解してもらいやすい印象があります。
一方で、点眼薬が処方されていない患者さんから、
「この飲み薬は目のかゆみにも効くんですか?」
と聞かれたこともあります。
そのようなときは、
「飲み薬は全身に作用しますが、点眼薬は目の症状がある場所に直接使える薬です」
と説明することがあります。
飲み薬を使っていても目症状が残る場合には、点眼薬が追加されることがあります。
患者さんには、
「飲み薬だけで目のかゆみが残るときには、目に直接使う薬を追加することがあります」
と説明すると理解してもらいやすくなります。
目の炎症が強い場合には、ステロイド点眼薬などが使われることもあります。ただし、ステロイド点眼薬は、花粉症の目症状に一律に使う薬ではありません。眼圧上昇や感染症の悪化などに注意が必要なため、医師の診察を受け、状態を確認しながら使用されます。
この記事では点眼方法までは詳しく扱いませんが、点眼薬は目の症状がある場所に直接使う薬として考えると、処方全体を理解しやすくなります。
飲み薬・点鼻薬・点眼薬を一緒に使うのはなぜか
花粉症の処方では、抗ヒスタミン薬、点鼻薬、点眼薬などが同時に処方されることがあります。
実際に、
「アレルギーの薬が何種類もありますが、全部同じ薬ですか?」
と聞かれたことは何度かあります。
そのようなとき、細かい受容体や薬理作用を一つずつ説明すると、かえって分かりにくくなることがあります。
私は、
「それぞれ働き方が少し違います」
「狙っている症状が違います」
「飲み薬と点鼻薬、目薬では効かせる場所も違います」
という形で説明することがあります。
さらに患者さんの理解に合わせて、
「これは今出ている症状を抑える目的が強い薬です」
「こちらは続けて使うことで症状をコントロールする薬です」
「こちらは鼻や目など、症状がある場所に直接使う薬です」
と役割を分けて説明することもあります。
もちろん、すべての花粉症薬をこの三つに完全に分類できるわけではありません。あくまで、複数の薬の役割を患者さんに理解してもらうための説明方法の一例です。
鼻と目の両方に症状がある場合には、内服薬に点鼻薬や点眼薬が加わることがあります。それぞれ狙う症状や場所が違うと考えると、複数の薬が処方される理由を理解しやすくなります。
つまり、複数の薬が処方されているからといって、
「同じ作用の薬を何種類も重ねている」
とは限りません。
細かい薬理作用よりも、働き方・狙っている症状・効かせる場所の違いで説明する方が、患者さんには伝わりやすいことがあります。
花粉症の薬は症状が良くなったらすぐやめてもいい?
花粉症の患者さんと話していると、
「調子が悪い日にだけ使っています」
「少し良くなったので、もうやめました」
という話を聞くことがあります。
ただ、花粉症の薬は種類によって使い方が異なります。
そのため、
「花粉症の薬は全部、毎日続けなければならない」
とも、
「症状がなくなれば全部すぐやめてよい」
とも一括りにはできません。
特に鼻噴霧用ステロイド薬は、十分な効果を得るために継続して使用することが重要です。ただし、具体的な使用期間や中止時期は製品や処方内容によって異なります。
抗アレルギー点眼薬についても、症状がある瞬間だけ使うのではなく、指示された用法で継続して使用することが基本となる薬があります。
薬の名前と回数だけではなく、いつ使い、どのように続ける薬なのかまで伝えることが大切です。
市販の花粉症薬を使っている場合も確認する
処方薬が出ている患者さんでも、市販の花粉症薬を一緒に使っていることがあります。
これは花粉症だけに特別な話ではありません。処方薬と市販薬の重複や相互作用を確認することは、普段から薬剤師が行う基本的な業務です。
ただ、花粉症の時期には患者さん自身で、市販の内服鼻炎薬、点鼻薬、点眼薬などを追加していることがあります。
内服鼻炎薬には抗ヒスタミン成分が入っていることがあり、処方薬と同じ系統の成分が重なる場合があります。そのため、眠気などの副作用も含めて確認が必要です。
点鼻薬では、血管収縮成分を含む市販薬を繰り返し使用していることがあります。血管収縮薬の連用では、かえって鼻づまりが悪化する二次充血が問題になることがあります。
点眼薬についても、すでに市販薬を使用している場合は処方薬との役割や成分の重複を確認します。
患者さんが商品名を覚えていない場合もあるため、
「市販の鼻炎薬は飲んでいませんか」
「鼻にシュッとする薬を使っていませんか」
「目薬を自分で買って使っていませんか」
と具体的に聞いた方が分かることがあります。
市販薬やサプリを薬剤師が確認する理由については、別記事でも整理しています。
関連記事:薬剤師が市販薬やサプリを確認する理由|飲み合わせだけではない注意点
薬剤師は薬の数だけでなく、今の症状を確認する
花粉症の処方では、「去年より薬が増えた」「何種類も薬が出ている」という情報だけでは、処方の意味は分かりません。
たとえば、鼻水は改善して鼻づまりだけが残っているのか、今年は新しく目症状が出ているのかでは、薬が追加された理由も変わります。
薬剤師が診断するわけではありませんが、現在のくしゃみ・鼻水・鼻づまり・目症状や、前回・前年からの変化を確認することで、処方意図を考え、それぞれの薬の役割を説明しやすくなります。
花粉症処方では、薬の名前だけでなく「どの症状に対する薬なのか」を見ることが大切です。
まとめ
花粉症の薬は、強さだけで考えるのではなく、どの症状を狙っているのかで整理すると分かりやすくなります。
くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目症状では、使われる薬の役割が異なります。
複数の薬が処方されている場合も、それぞれ違う症状や場所を狙っていることがあります。
そのため薬剤師は、薬の数だけではなく、現在の症状や前回・前年からの変化を確認することが大切です。
そして、それぞれの薬の役割と使い方を患者さんが理解できるよう説明することが、花粉症の服薬指導では重要だと考えています。
